佐藤克巳

残菊物語の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

残菊物語(1939年製作の映画)
5.0
二代目尾上菊之助の実話か判明しないが、溝口健二監督の戦前最高傑作と評判の、芸道物三部作の唯一現存する貴重な作品。成瀬巳喜男「鶴八鶴次郎」の歌舞伎バージョンといった感じだが、音羽屋という名跡が再起復活の決め手であり、ワンシーンワンカット全篇の様式美の見事さは認めるものの、疑問符が残る事は否めない。冒頭の「東海道四谷怪談」に度肝を抜かれ、隅田川の花火に行かず菊之助花柳章太郎とお徳森赫子が調理場で西瓜を食べるシーンの崇高さ、道頓堀川の凱旋下りとお徳との別れは涙誘う。流石大松竹の威力抜群で、親友中村福助の高田浩吉の助演も素晴らしい。
佐藤克巳

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