マッシー

ミツバチのささやきのマッシーのレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
4.7
ほんと素晴らしい映画。映像が美しすぎる。広ーーい荒野を幼い姉妹がトコトコ走っていく。もうこれだけで幸せ。機関車が通り過ぎていく。緩やかにカーブした一本道。蜂の巣の形の窓にはちみつ色の光。部屋の中のシーンは宗教画のよう。火を飛び越える子供たち。神がかり的な可愛さのアナトレント。村にやってきたフランケンシュタインの映画を見て本当だと思い込む。セリフもあまりない。じっとみる映画。絵本のよう。ずっと浸っていたい。暗喩に満ちた映像詩。
あとから町山さん解説を読んでスペイン内戦の影響が濃いことがわかった。これが作られた当時はフランコ将軍がまだ生きていたので子供を主人公にして政府批判は比喩的に隠されている。世捨て人のようにミツバチの研究に入れ込んでいるお父さん。国外に逃亡した大事な人に手紙を書くお母さん。ファシズム政権になってしまいかつての左派側の人たちは挫折を抱えてひっそりと生きている。無邪気に遊ぶ姉妹にも「死」の影がちらつく。魂を落としたようになって幻想の世界に彷徨うアナ。最後の台詞が未来への希望。辛い世界で少女が想像世界によって救われるところはパンズラビリンスを彷彿とさせる。
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