ちろる

香華 前後篇のちろるのレビュー・感想・評価

香華 前後篇(1964年製作の映画)
4.1
202分。ため息つく瞬間もなく画面にかじりついた。壮絶な女のものがたりに

身勝手な母親に振り回されて、いつもハズレくじ。
類い稀なる美貌と色気を兼ね備えながらも、いつの間にやら頑なになった女(岡田茉莉子)のあまりに強くトゲトゲとなっていく女の哀しき人生。
60過ぎてもずっと男にだらしない母親を乙羽信子が見事な演じており。
田中絹代→乙羽信子→岡田茉莉子 3世代の女の業がぶつかり合う演技は目が離せない。

惚れた男 野沢にしがみつく情熱は、運命の糸に宙ぶらりんにされたままで美貌は無駄に消費されていく激動の時代。
母親のせいでどんどん不幸になっていくのに、母親が一向に男日照りにならないという理不尽な人生が妙にリアリティあり納得行ってしまう。
男は付け足しで女たちの魂の演技が心に残る作品だが、木下恵介はなぜにこんなに女を知っているのだろうか?と感心させられる。
こちらは毒親を描いている作品だが、逆に母親の悲劇を描いた「日本の悲劇」と対で観たら、この時代に社会の隅っこで生きた女たちの生き様を全て網羅できると言っても過言ではない気がする。
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