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ボクと空と麦畑のhanaのレビュー・感想・評価

ボクと空と麦畑(1999年製作の映画)
4.0
リン・ラムジー監督作品。

舞台は1973年のスコットランドのグラスゴー。曇りがちな空、灰色のアパート、濁った川が気持ちを鬱々とさせる中で、輝きを放つのは子供達の吸い込まれそうなブルーの瞳と黄金の麦畑。

労働者階級の日常は、ストライキが齎すストレスが蓄積され、鬱憤や苛立ちへと形を変えて崩壊危機にあった。アパートを囲むように積み重なっていく家庭ゴミとそこに集うネズミの不衛生さが更にストレスを助長させて、悪循環のスパイラルから抜け出せない。

窮屈な日常を刺激で埋めていた主人公のジェームズは、ある日思わぬアクシデントに見舞われる。残酷な現実と向き合うことができず辿り着いた先は金色に輝く麦畑。自分にとってのオアシスであり希望のような場所。

寂れた町に暮らす貧困層の暮らしを少年の視点から描いていく作風はケン・ローチ監督の「ケス」を彷彿とさせる。「ケス」の重さに輪をかけるように容赦のない現実を突き付けてくるため、気持ちは下降気味。

陰鬱が根底にあると、時折訪れる幸せがより愛おしく尊い。それは、俄雨の後に陽光が差して晴れ間が広がっていく美しい情景を思い出させてくれる。

残酷さを被せてくる構成は決して優しくないけれど、生きることは現実の厳しさに日々直面しながら道標を探すことだと捉えると、自然と受け入れられる。

鑑賞後は、どこか晴々とした気持ちになります。
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