あゆみ

絵の中のぼくの村 Village of Dreamsのあゆみのレビュー・感想・評価

3.6
友人と部落問題について話していた際、話題に上った本作。
さぞ重い映画だろうと覚悟して観たら、主題は双子が過ごした瑞々しい夏の日々だった。
土佐弁でピーチクパーチクしてる双子が本当に可愛らしい。釣りの最中に喧嘩を始めて、押し合い圧し合い大号泣のシーンなんて最高。
自分の子供だったら「てこにあわん」となるだろうけれども。


「あの子だけはいかんぞね。帰ってもらい」

子供には、その理由を説明してもらえないまま、結論だけを押し付けられることがたくさんある。違和感の正体を説明する力が足りず、ただ諦め従うほかない。
どうせ時が経てば忘れるだろうと大人は考えるが、子供だからと、有耶無耶にされ軽く扱われた記憶は意外に根深く残っていたりする。

小学校の頃、社会の授業で部落問題が出てきた際、「部落問題についてはデリケートな部分があるので詳細は説明しません」と先生が言ったことがあった。
初めての出来事に妙な緊張を感じ、家に帰って親に尋ねると、「部落なんてそんなこと口に出さないで!」と会話を遮断された。
教員も親も、自分のそれまでの経験では処理できない言動だったので、「これ以上は何も言えないし聞けないんだ」と胸にしまった覚えがある。
結果として、大学で部落問題に関する本を手にするまで、わからないまま、何も知ろうとせずに生きていくことになった。
そして自分の無知故に人を傷つけたことはなかっただろうかと、痛切に我が身を恥じた。

明らかなレイシストは論外として、本当に恐ろしいのは基本的に善良に見える人たちが、悪意なくその差別に加担している様を目にする瞬間だ。
結局、対話と教育なのかな。また明日続きを考えよう。
あゆみ

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