シガーandシュガー

エクソシスト/ディレクターズ・カット版のシガーandシュガーのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

この版でこそ、この作品がしみるのじゃないかというのが個人的感想。
時間をかけるぶん話の運びが丁寧で、登場人物の体温が感じやすくなっていると思うし、リーガンの治療がまったく功を奏さない過程を描いていることで周囲の戸惑いや絶望もだんだん深まっていくのを感じる。まだ悪魔祓いを依頼する前に、母とカラス神父の日々がなんとなく交差しているところもいい。

そして何より私が嬉しかったのが、エクソシスト中にメリンとカラスが階段下で話すシーン。
「なぜあんないい子がこんな目にあうのか」
「我々を絶望させるためだ、神の愛に値しないと思わせるため」(もう少し長い)
ここは、エクソシストを名作たらしめている核の部分だと思うのだけど、オリジナルではカットされているので、神父二人が一人の少女を救う奉仕の印象が強くなってしまっている気がするけれど、本来は神父たちが「失われようとしている(実際カラス神父は失いかけている)信仰を取り戻す」ために闘ってもいるのだということがよく分かる場面。
ここを経て、神父二人の最期を見ると心が震えます。

生前のカラス神父を知る二人(友人の神父、刑事)の会話でしめるラストも、かえってカラス神父の不在を印象づけるような終わりに思えたし、良かった。

もともとカラス神父のハードボイルドな佇まいが良くてこの作品が好きだったのだけどディレクターズカット版ではカラス神父の苦悩も丁寧に描かれている。神職を捨てようとしていた彼が悪魔の存在を認め、真正面から対峙し、力の限り闘った姿がオリジナル版よりくっきりして見えた。なかなかこのカラス神父を超えてエクソシスト物を作るのは難しいだろうなと思う。