ギズモX

エクソシスト/ディレクターズ・カット版のギズモXのレビュー・感想・評価

4.8
経済格差が広がるアメリカを舞台に、信仰を見失った神父が悪魔に取り憑かれた少女に対して悪魔祓いを行う、ウィリアムフリードキン監督の伝説的ホラー映画。

悪霊の強烈な描写が原因で当時のキリスト教徒から大バッシングを受けた曰く付きな傑作。
実はこの映画、悪霊や悪魔祓いといったオカルト描写は特に重要な要素ではない。
教会の視点で見ると、信仰を見失った神父が普段の役職どころか悪魔祓いを行うというのは非常に危険な行為であり、設定に無理があるからだ。
教職者が精神を病んだのであれば、まず一旦役職から離れて休養させるべき。
しかし、本作が描きたいものは正にそこで、"自暴自棄な人間が科学では太刀打ちできない状況に対して、原始的な手段を用いて全身全霊で挑む破滅的行動"こそある。
この構図はフリードキンの『フレンチコネクション』と全く同じ。
『フレンチコネクション』は、真冬のNYを舞台に粗暴な警官が巨大麻薬組織に訳もなく挑む話で、どちらも麻薬や悪霊といった現代の叡智ですら太刀打ちできない状況が関わってくる。
そして、そんなどん詰まり状態に対して、主人公達は今まで誰も行わなかった破滅的行動で一点突破を図っていく。
この映画が暴き出したものは、そのような息も凍るような堕落した現実と、そこで生きる人間の本質そのものなのである。

神や世界は何故人を試すのか。
それは、実行に移した者にこそ理解できる領域なのだろう。
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