こたつむり

いのちの紐のこたつむりのレビュー・感想・評価

いのちの紐(1965年製作の映画)
3.3
♪ ごめんね 今までだまってて
  本当は彼がいたことを

「いのちの電話」
それは精神的に追い詰められても縁を離せない人たちに向けた“救いの糸”。それが1960年代からあることに驚きました(調べたら1953年のイギリスが最初だとか)。

今も昔も世知辛いのは変わらないんでしょう。
でも、現代の方が“救いの糸”は増えているかも。
炎上が目立つSNSだって適切に扱えば“救いの糸”になるのです。

さて、本作はそんな「いのちの電話」の物語。
留守番を務めるアルバイトの学生が取った電話。
向こう側から聞こえてきたのは自死を予感させる女性の声。はたして、彼は彼女を助けることが出来るのか…?

いやぁ。大変な展開です。
しかも、彼女は睡眠薬を飲んでいます。これは緊迫感が漂いますよ。電話を切られないように言葉を選ばないといけないし、救う手立てを考えて関係機関に連絡しないといけないし。

そして、彼は見事な活躍でした。
本気で彼女を救おうとするのが伝わってくるのです。正直なところ、自分はここまで親身になれるかな…なんて考えてしまうレベル。

というか、彼女は身勝手なんですよ。
自身が犯した過ち(結婚前の不貞)を棚に上げて「私の苦しみが分かるの?」と被害者(今回の場合は夫)に向けて宣うのです。まさにキング・オブ・逆ギレ。

でも、彼女を救うために誰もが奮闘します。
「いのちの電話」のメンバーは招集され、電話会社は逆探知し、警察は彼女を探し回ります。しかし、彼女には響きません。憂鬱の向こう側の憂鬱に囚われてしまったため、誰の言葉も響かないのです。

やっぱり、身勝手だよなあ。
こんな女性を助ける必要があるのかなあ。
…なんて考えてしまう自分がイヤになります。
あー。優しい人になりたい。

まあ、そんなわけで。
自殺者を助けるために頑張る人たちの物語。
「いのちの電話」だけじゃなく、人を助ける職業の人たちを純粋に尊敬します…そんな気持ちで臨めば、僕のように優しくない場合でも響くものはあると思います。たぶん。
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