ぶみ

英国王のスピーチのぶみのレビュー・感想・評価

英国王のスピーチ(2010年製作の映画)
3.0
英国史上、もっとも内気な王。

トム・フーパー監督、コリン・ファース主演によるイギリス、オーストラリア製作の伝記映画。
吃音症に悩むイギリス王ジョージ6世の姿を描く。
主人公となるジョージ6世をファース、彼の妻となるエリザベス妃をヘレナ・ボナム=カーター、言語聴覚士ライオネル・ローグをジェフリー・ラッシュが演じているほか、ガイ・ピアース、ティモシー・スポール、マイケル・ガンボン等が登場。
物語は、1925年、大英帝国博覧会閉会式における当時は王子であったジョージ6世のスピーチシーンでスタート、その演説が吃音症により散々な結果に終わったことから、言語聴覚士であるライオネルとともに吃音治療に励む様を中心として展開。
本来、人前で話すことが職務の一つである王族において、吃音症により上手く喋ることができず、その職責と現実との間で悩む主人公を、ザ・英国紳士役がピッタリなファースが好演しているのと同時に、彼とは対照的に自由奔放に生きる兄のエドワード8世を、ピアースがケレン味たっぷりに演じているのが印象的だったところ。
以降、吃音となった原因となる幼少期が語られたり、はたまた父の崩御により国王となったものの、その重責に押しつぶされそうになったりする姿が描かれるのだが、史実をベースとしているだけに、エンタメ映画的な面白さはあまりなく、また強烈なカタルシスがあるわけでもないため、少々盛り上がりに欠けたかなと言うのが正直な印象。
反面、時に懐に入り込み、時に突き放しと、ジョージ6世の感情を手玉に取るようにして治療にあたるライオネルの仕事っぷりは、まさにプロとも言えるものであることから、お仕事ムービーとして楽しむことができた次第。
人の心を鷲掴みにし、雄弁な演説をするヒトラーを見つめるジョージ6世の眼差しが切なく、理想的な指導者と自身とのギャップに潰されそうになる国王に人間味を感じるとともに、そんな国王を繊細な演技で体現したファースと、当時の調度品や衣装を細部まで作り込み、英国の空気感を再現したスタッフに頭が下がる一作。

私には王たる声がある。
ぶみ

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