ちろる

苺とチョコレートのちろるのレビュー・感想・評価

苺とチョコレート(1993年製作の映画)
4.0
政治と愛と芸術と・・・

「愛してる。」
君にこれ伝えることがどんなに夢だったか分からない。
出会いのきっかけに過ぎなかった苺ほアイスクリームの存在が宝石のようで、世界一のご馳走のように見えた。

陽気で強いディエゴに巻き込まれていくダビドが、
ダビドとディエゴだけでなく、同じアパートに住む繊細な娼婦ナンシー、3人の交流が愛に溢れて泣ける。

いつだって自分でありたいと願って、どんな逆風にだって持ち堪えてきたはずのディエゴが限界を感じて、打ちひしがれていく様子で
当時のキューバの共産主義の圧力やゲイへの迫害がどれほどのものだったのか分かる。
ただ、素敵な友情というお土産があったことがどんなに彼にとって救いになったのだろう。

思想も、性的趣向も、芸術も、職業も決して差別や迫害の材料になるべきではない、才能のある人間たちあるべき姿で生きることの出来なかったこの時代のキューバへの怒りを響かせながら、切ない友情ストーリーに仕上げた極上の脚本に拍手。

なんといってもディエゴを演じたホルヘ・ペルゴリアのおおらかで柔らかい物腰の演技がとても素敵で印象的な作品でした。
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