麻衣

処女の泉の麻衣のレビュー・感想・評価

処女の泉(1960年製作の映画)
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中学生の頃、夜中にテレビで映画を観てて、そのほとんどを忘れちゃってるんだけど、これはやけに記憶に残ってる。ずっとタイトルがわからなくて、この前やっと特定した。ベルイマンのだって知らずに観てたな。
まだ何も起きていない間からカーリンの先行きが不穏にしか感じられない。あの楽器の音、なんかすごい嫌。
研究のために教会史を読んでいたときに、若くして死んだ異教徒の皇帝と若くして死んだキリスト教徒の皇帝が出てきて、前者は順当に神の怒りによる死という説明だったのに対して、後者は俗世にとって良い存在でありすぎて、人々がその人に値しないことを示すために神が人々からその人を取り上げてより良い生き方をするよう導いたみたいな説明がされていて、物は言いようすぎる!と思ったことがあった。
それを読んだときは、まあこれは建前だとしても、実際、すべての出来事は神の思し召しと信じる人々は、敬虔で善良な人間に降りかかった不条理をどういうメンタリティで受け入れるの?と思っていたけど、インゲリもカーリンの母も男たちを責めるのではなくて自分を責め出したのを見て建前で言ってることじゃないっぽいと思い直した。信仰とはなんたるかの片鱗を見た気がする。
これが私にはどうやったってわからない感覚で、生まれたときからガチガチに固められた信仰の環境に身を置いてないとそうはならないと思う。犬の手術中祈ることしかできなかったからずっと祈っていたけど亡くなってしまって、やっぱり神なんていたもんじゃないの方向に進んだもんな。もしかしたらこの不信心のせいだったかもしれない。とはいえ、超越的存在を信じてないわけでもない。
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