ちろる

王と鳥のちろるのレビュー・感想・評価

王と鳥(1980年製作の映画)
3.9
日本では長く、改作前の『やぶにらみの暴君』として知られたこちらの物語。
以前『高畑勲展』で高畑勲さんや宮崎駿さんがこれに学生時代に出逢ってアニメを志すきっかけともなった作品として紹介されていた時から、ずっと観たかった。
U-NEXTに入ってました。

孤独で嫌われ者の王様。
彼は望むものは何でも手に入る暴君なのであるが、ただ一つどうしても叶えられない望みあった。
それは絵の中に住む美しい羊飼いの女に片想いしている事。

夜中に絵の中の羊飼いの女と煙突掃除人は抜け出してロマンティックなデートをする
それは真夜中の魔法。

盲目の音楽家とユニークな猛獣たち。
そして王を欺く鳥の賢さがワクワクします。

古典アニメと思って侮るなかれ!
この暴君王様のお城のハイテクさは想像を超え、超高速エレベーターや巨大ロボットなども登場してしまうのでメカ好きの少年たちがさぞかしワクワクしたのでしょう。

長い長い階段を駆け下りるシーンや、ありえないアクションを交えた逃亡シーン、そしてラストのロボットのシーンなどは『カリオストロの城』や『天空の城ラピュタ』そして『千と千尋の神隠し』を思い出します。
きっとこのアニメのこれらのシーンが焼き付いて後のジブリとなったのでしょう。

まるで劇場の答弁師のごとく軽快なテンポで王様を欺いていく鳥。
なによりもおかしいのは、王様は早い時点で絵の中の虚像の王様と入れ替わってること。
賢い鳥によって、そして王の強い嫉妬心によってこの国は崩壊していく様なおはなしですが
そとそも家来たちもまったくもって王が本物では無いことに気がつかずに媚びへつらい続けてたとかもともと崩壊寸前の国だったんだろう。

映像もさることながら、所々の台詞もとても印象的。

鳥が若い2人に言い放つ
「気をつけたまえ、この国は、罠だらけだ」

王が娘に言い放つ
「労働とはすなわち自由だよ」

残酷なほど社会風刺が効いた台詞なのもフランスらしい、ロボットが狂ったように暴れ回るシーンも含めてファンタジーの領域を超えているこの作品はなんなら子供向けでは無いのではないかな?
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