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蝉しぐれのodyssのレビュー・感想・評価

蝉しぐれ(2005年製作の映画)
4.0
【藤沢周平の代表作の映画化として成功】

藤沢周平作品の映画化。黒土三男 (くろつち・みつお) 監督作品。

江戸時代の地方小藩を舞台に、父が謀反に加わったという咎で死罪に処され貧しい暮らしを強いられつつ育った主人公(石田卓也 → 市川染五郎)が、やがて父の旧碌に復するものの、代わりに家老の陰謀に加担させられ、奇しくも、幼なじみながら江戸屋敷に仕えるうちに殿様の子供を生んで側室となっている女性(佐津川愛美 → 木村佳乃)と再会を果たす、という物語。 

幼い頃から惹かれ合いながらも、ついに結ばれることなく終わる二人の出会いと別れが、切なくも淡々と描かれている。また季節の移り変わりが美しい映像で表現されているのも魅力的だ。 

ヒーローの大人役とヒロインの子供役にはやや不足を感じたし、筋書き上の難点もないではないが、長所が欠点を補って余りある作品であり、藤沢周平の代表作の映画化として満足できる出来栄えだ。 
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