金宮さん

SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者の金宮さんのレビュー・感想・評価

5.0
2012年はR-指定がMCバトル大会3連覇する初年度。いまやフリースタイルバトルも地上波放送されるほど。アンダー寄りのヒップホップはお馴染みのものとなりましたが、公開当時はまだまだこれからの黎明期ですね。

そんな時期に三部作の完結編として描くのは「ヒップホップ文化と日本社会の関係性」。そもそもはニューヨークスラムいわゆるゲトーを発祥としたギャングスタ文化であるホンモノ感に、黎明期の日本語ラップってなんとなく気遅れした感じがうっすらあったのではないか。やってる本人に気遅れはなくても、周囲の「ヨーヨー、チェケラのあれでしょ?」的にニセモノへ向けた少しシニカルな目線はあったのではないかとか思ってます。

でも社会から阻害されたことによる鬱屈を吐き出す衝動や、マイク1本の上昇志向があればホンモノもニセモノもない。日本におけるリアルな鬱屈を地方都市独特の「出口の見えなさ」により表現し、ジャパニーズヒップホップ自体を肯定している作品です。

2段階加速のようにハイライトが2回あるのも贅沢で、特に1回目の野外フェスワンカットは前述した「出口の見えなさ」を表現しつつ、長回しにより「そこ」に近づくにつれライブの音量が徐々に大きくなる様を見事に表現。邂逅時のゾワっと感を倍増させます。とにかくここは映画史に残る名シーンといっても過言ではないかも。

クライマックス2回目、シリーズお馴染みの長回しフリースタイルの熱さは言わずもがなです。

真正面から熱い気持ちを吐露することに気恥ずかしさのある日本人としては、韻を踏むことがその免罪符となるラップは実は映画との親和性が非常に高い。それを発明したマスターピースです。

ーーーーーーーーー

・実際に栃木や埼玉ってラップ激戦区。でも個人的にはオーバーとアンダー双方の二大巨頭(GADOROと mol53)を抱え、別ジャンルのお笑いでもとろサーモン久保田さんや永野さんなどにバイブスを感じる宮崎が最強説を持っています、という余談。宮崎を舞台に入江監督撮ってくれないもんかしら。

ーーーーーーーーー

上述した、「免罪符としてのラップ」表現は、意外なところで『愛がなんだ』で使われてたりしますよね。

https://youtu.be/HV4DFhfXFhs?si=8kMbVG6YAi_CqjDg
金宮さん

金宮さん