エイプリル

シザーハンズのエイプリルのネタバレレビュー・内容・結末

シザーハンズ(1990年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

オープニングのフォント、美しい音楽、アメリカ郊外のお洒落な街並みなど、デザイン面が美術面がかなり良くて、ぼんやり見ているだけでも目が癒されます。エドワードの回想に出てくるロボットも可愛いです。
美しい愛情を描いた悲しい童話という感じで全体のストーリーも良いですが、それ以上に「手」というインターフェースが人間にとっていかに重要かということも描かれており、色々と考えさせられる内容にもなっています。
エドワードのことを受けて入れていた人々の手のひら返しも「恩恵を受けている間は受容できるが恩恵がなければ差別的行動に走る」という、まさに障害者差別を綺麗に表現しています。

ただ、全体的なストーリーの美しさに対して、それを展開する登場人物の思考回路がご都合的というかストーリーありきで動きすぎているのが気になりました。
まずキムがエドワードに惹かれるきっかけがいまいち分からず、キムをエドワードの味方にしたいから無理やり好きにさせたように見えてしまいました。
このキムという人物、エドワードのことを想っているように見せかけて、常に自分だけは事件の中心にならないよう立ち回っており非常に狡猾です。エドワードのこと、ちょっとはみんなの前で弁解してあげて欲しかった…。
また、キムの母親がエドワードをあっさり受け入れて、何の葛藤もなく城から連れ出すのも後半の伏線になっているのかと思いましたがここも何にもありませんでした。セールスマンという仕事を通して感じる閉塞感をシザーハンズで切り開いて欲しかった…みたいな話になるのかと勝手に思っていました。
その上「城に返した方が本人のためかも」とか言い出した時、手に負えないペットを元の川に放流するみたいな酷さを感じてきつかったです。
「善」であるキャラクターと「悪」であるキャラクターを明確に分けすぎていて、それが原因で登場人物がどうも人間らしくないというか、ストーリーに動かされている感があるのが何とも…という感じではありました。
主人公であるエドワードの、対人ストレスにめちゃくちゃ弱いが故にすぐ攻撃行動を取るっていう描写はとても繊細で好きだったので、その分他の登場人物については残念でした。

それでもラストに元彼にトドメを刺したの気分が良かったですし、エドワードが死んだことをキムが発表した時にジョイスだけめちゃくちゃショックを受けてるっぽかったのは役者さんの演技のうまさもありとても良かったです。
雪の話はもうちょい早めに伏線として出して欲しかった…みたいな感じはありますが、ラストも綺麗で感動的です。
色々細かいところは気になりますが、部分部分の盛り上がりはとてもドラマティックで映画として迫力がめちゃくちゃあります。名作映画と言われるのもわかる貫禄で良かったです。
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