りっちー

揺れる大地のりっちーのレビュー・感想・評価

揺れる大地(1948年製作の映画)
3.9
ルキノ・ヴィスコンティが監督を務める「揺れる大地」

シチリア島を舞台に仲買人に搾取される労働者たち。それに刃向かい独立したがために、厳しい現実を突きつけられ崩壊していくが、逞しく生きようとする家族の物語。

彼らの着ている服はこれでもかというほどボロボロ。そして裸足。だけどどこか気品がある。貧しい人たちを描いているのに、汚らしさや泥臭さがない。美しく、厳か。荒波や所々のシーンでなびく風は、モノクロを通して荘厳さを感じる。

明日のパンを稼ぐためだけに漁に出る。それが生き延びる道。
その道を失った時、家族は困窮に見舞われる。
搾取されることも辛いことだけど、職を失うことはもっと辛いことなのじゃないかな…

そうゆう時代と環境で生きていくことの厳しさが、痛いほど伝わってきた。決して楽しくはない映画。ハッピーになれるようなことは1つもなかった。はっきり言って苦しい。
まず貴族出身であるヴィスコンティがこのような映画を作り上げたことに驚き。
そしてオールロケ、全出演者をそこの住民からキャスティングしたということで、よりリアリティが増していた。

ラストの船を漕ぐシーンは逞しく、人生は辛くても投げ出さないで必死に生きていく意味が何かあると感じた。

人生の勉強になる映画。
そしてヴィスコンティの才能を見せつけられた映画。
りっちー

りっちー