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死刑弁護人のodyssのレビュー・感想・評価

死刑弁護人(2012年製作の映画)
2.5
【客観的に見ると問題が多い映画】

弁護士・安田好弘の活動を紹介したドキュメンタリー映画。 安田は1947年生まれだからいわゆる団塊の世代。大学生時代には学生運動にかかわり、卒業後に弁護士の資格をとり、主として労働者や死刑判決を受けた被告の弁護にあたってきた。

このドキュメンタリーは、カレー毒殺事件の林真須美容疑者や、オウム真理教事件の麻原彰晃容疑者、光市母子殺害事件などの弁護にあたる安田を映し出している。

私の見るところでは、カレー毒殺事件、それから安田がオウム真理教裁判にかかわっている最中に別件で弁護士法違反の罪で逮捕された事件(これは明らかに検察側の嫌がらせ)は、この映画を作った側の主張にそれなりに説得性を感じる。

しかし、それ以外の件では説得性が薄かった。

なぜか。映画の作りそのものが悪いからだ。同じような映画でも、例えば『BOX 袴田事件 命とは』は、なぜ袴田事件が冤罪と考えられるかを丹念に映像で説明しているから納得が行ったし、本作と同じ監督による『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』も、少なくとも後半には証拠についての客観的な説明が展開されるのでうなずける部分が多かった。

ところが本作はそのような客観性が後退している。監督が主役の安田に寄り添い過ぎていて、これでは第三者を納得させることは難しいだろうと思った。

また、安田は死刑廃止運動に関わっているようだが、冤罪と死刑廃止は別の問題であり、その両方をひとつの映画で主張すること自体に無理がある。冤罪とはっきり分かった判決を批判することには誰でも賛成するだろうが、何人もの人間を殺害したことに疑いがない犯罪者の死刑に反対する人間は多くないからだ。そういうことが分からないで映画作りをやるのは、ちょっとどうかと思うな。
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