Kientopp552

秒速5センチメートルのKientopp552のレビュー・感想・評価

秒速5センチメートル(2007年製作の映画)
4.0
 2007年作の本作は、SF味を無くした『ほしのこえ』(2002年作)であり、恋の物語りとしての『言の葉の庭』(2013年作)への展開の前提となる作品と位置づけられる。
 
 本作は、オムニバス形式で、三つの短編からなっており、合計で67分である。一本20分程度の長さの短編アニメを、一つのテーマ「別離」でまとめたものである。『ほしのこえ』も、同様のテーマであり、また25分の短編であった。

 ストーリーのセッティングとしては、小学校から中一年生にかけた男女生徒の、出逢いと離別から本作は始まる。年齢の割には「大人」である二人の精神発達のレベルを、少々訝しく思いながらも観る筆者にとってさえ、本作の第一話「桜花抄」は、鉄道の旅も含めて、浪漫的であり、雪景色の中での櫻の木の下でのシーンは、主人公の年齢を無視すれば、一幅の「絵」でさえ、あり得る。

 ゆえに、第一話での年齢を引き上げて、両者を高校三年生としてはいかがであろうか。より現実味が増すと思われる。それに合わせて、第二話「コスモナウト」は、大学での片思いのストーリーとしよう。一途に主人公を想う澄田花苗(かなえ)の、みずみずしさと痛々しさは、女子大学生の年齢でも十分に表現できるはずである。

 第三話の、櫻の花が地上に落下する速度を表すという題名の「秒速5センチメートル」でのセッティングは、原作同様の、主人公が社会人となっているものでそのまま行けるはずである。同様に、主人公と三年も付き合っていて、それでも、「1000回にわたるメールのやり取りをしたとしても、心は1センチほどしか近づけなかった」水野理沙の切なさと無残さは、主人公の、第一話での、初期体験の「初恋」の想い入れを強調するためだけの役割を持つとしても、本作を観る者にとっては、極めて印象に残るプロットである。
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