デニロ

娘十六ジャズ祭のデニロのレビュー・感想・評価

娘十六ジャズ祭(1954年製作の映画)
3.5
1954年製作公開。脚本赤坂長義、京中太郎。監督井上梅次。17歳の雪村いづみが主演。

冒頭の大階段に宝塚歌劇かと。先日観たロッシーニの「チェネレントラ」が被って、当時の市井の生活に比し映画の世界は豪勢だなあ、と思ったものです。

物語は、戦後10年もたたぬ東京で賑わいが復活しているさまが描かれる。そんな中で進駐軍の遺産のジャズですよ。おそらく2021年よりもオシャレだったんじゃないかと思われる戦前の大東京が灰燼に帰し、今まさに“贅沢は素敵だ”の世界に新東京が再構築されんとする頃。スタンダードが流れます。本場モンのジャズを浴びた東京が描かれます(多分)。

戦争の犠牲者たる市井の人々。生き別れ死に別れの戦災孤児。そんな姿を描きつつそれでも若者は希望に燃え、それだからこそ老人は若者に未来を託す。

それにしても17歳の雪村いづみは小さくて子供っぽい。彼女に比べると、少し前に観た1962年17歳のカトリーヌ・スパークは若鮎のように香り立っていた。外国映画が隆盛した理由もそんなところから分かろうというものだ。

シネマヴェーラ渋谷 秋の新東宝祭り にて
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