歩く肉

砂丘の歩く肉のレビュー・感想・評価

砂丘(1970年製作の映画)
-
アントニオーニ×ピンク・フロイドという情報くらいしかなかったので、いざ観てみたらアメリカンニューシネマ的で少し意外だった。やろうとすることはわからなくないが、露骨すぎて辟易する。ベトナム戦争の反動で若者の空虚で荒廃した心を、そのまま砂丘で表現するのもあまりにもストレートすぎるし、それと広告や看板といった資本主義のシンボルとの対比も、意図が見え透いて、芸がないと思った。
アントニオーニは今まで四作くらいしか観てきたことないが、やっぱり自分はこの監督と感性的な部分では合わない。感覚的なものや感情的なものを全部体系化して小難しく論じようとする、西洋哲学的な傾向があるように思う。言葉に頼らなくても理解できる内容をわざわざ専門用語や晦渋な文章を用いて説明するようなイメージ。
あと、文明社会のただ中に立ちながら文明批判するというのが、個人的にはなんというか机上の空論に感じるし、西洋の偽善を垣間見えるようにすら思う。例えば資本主義や物質主義を批判する為に建物や物質を大掛かりに爆破する場面など、それ自体が物質を浪費する行為ではないかという、自己矛盾を抱えているような気がしてならない。
歩く肉

歩く肉