このレビューはネタバレを含みます
「coming home……」と始まる歌。子供の頃のブライアンと母の会話。暗闇から始まったこの映画のファーストカットは、母と電話で言い争うブライアンの姿と声であり、それらに併置されるのは2人の姉妹である。彼らがクロスカッティングによって併置されることで、それぞれの家族にまで世界を広げながら、彼らはとあるショットで同じフレームに入り込むが、それはほんのわずかな瞬間に過ぎない。その瞬間であれ、しかし彼らの見事な交錯から、幕をあける。
お金、宗教、隣人。
なにを信じることが私たちはできるのだろうか。
わたしたちは、「わたし」という個人だけでどこまで生きられるのか。生きることができないのか。
終盤の反復。
「気をつけて戻りなさい」と帰す母とブライアン。
姉妹の家に戻ると、また、「coming home……」ときこえてくる。
彼はあわてて、(いつも通りに？)靴を履いたまま入りかけるが、直ちに戻り靴を脱ぐショットを遠くから捉える。
彼女たちが、あの家にいるのか、いないのかは、観客たちに委ねられている。
音楽の入れ方、とても好きだった。
うた。音。
拒絶することのできないものがもたらしてくれる力。
