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盗まれた飛行船のBONのレビュー・感想・評価

盗まれた飛行船(1966年製作の映画)
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ジョルジュ・メリエスの後継者や大画面の魔術師と呼ばれ、チェコアニメーションの三大巨匠の1人として一時代を築いたカレル・ゼマン。

SFの父と呼ばれたフランスの小説家、ジュール・ヴェルヌの映画化3部作の第2作目。『二年間の休暇』と『神秘の島』に基づいたアール・ヌーヴォー様式の長編作。

19世紀末期のベル・エポックの都会が舞台。プラハの100周年記念博覧会にて、ひょんなことから5人の少年が飛行船をかっさらい、冒険に出るロビンソン・クルーソー的物語。

モノクロームの実写映像と、手描きやストップモーションアニメーションが融合したハイブリッドな作りとなっており、くすんだイエローのトーンで全体を覆ったフィルムはメランコリックで遊び心のあるムードを醸し出しています。イエローからブルーやモノクロームに変わるカットもお洒落。

一番初めに目に飛び込む飛行船のフォルムのデザインだけで高揚感が高まる。旅に出る男の子たちが飛行船に浮かんでいるシーンも切り絵のように可愛くて、家族を心配して家に帰りたい男の子が愛おしくなる。

軽快で子ども向けの作品ではあるものの、政治やメディア、ブルジョワなどのあくどい大人達と世界へ冒険をする子ども達の対比が描かれ、ゼマンの皮肉を感じる。翌年に起こるプラハの春を予感させるような象徴的な作品に感じた。

伝統的で味わい深い版画のようなのっぺりした世界観と、忘れられない音楽のテーマ。ノスタルジックで愛情深い作品だった。
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