空海花

緑の光線の空海花のレビュー・感想・評価

緑の光線(1986年製作の映画)
4.0
「喜劇と格言劇」第5弾。
一人の女性のひと夏の体験。
製作はマルガレット・メネゴス
撮影ソフィー・マンティニュー
音楽ジャン・ルイ・ヴァレロ
1986年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞。

夏のパリ。
オフィスで秘書をしているデルフィーヌは20歳も前半、ヴァカンスを前に胸をときめかせていた。
7月に入って間もない頃、ギリシア行きのヴァカンスを約束していた女友達から、急にキャンセルの電話が入る。
途方に暮れるデルフィーヌ。
フランスではヴァカンスに予定がないのは死活問題らしい。
周囲の人はそんな彼女を優しく慰め、誘ってもくれるが、どこに行っても彼女は一人打ち解けずにいる。
突然泣き出すデルフィーヌ。
気持ちは何となくわかる。
菜食主義について詳しく語る。
自分に遠いものなら食べられる。
じゃあ花は?
花は食べない。花は詩や絵画だから。
日付だけがどんどん過ぎていく。

トランプが落ちている。
スペードのクイーン♠
ミステリアスな予感と
「緑の光線」ジュール・ヴェルヌの小説の話が聞こえてくる。
太陽が沈む瞬間に放つ緑の光線は幸運の印。

三度目の旅の帰りの駅の待合室で初めて、ようやく彼女は心を開き始める。
変な話を始めないかとヒヤヒヤするが
心優しい相手の男性に心底安心する。

自分の本心がわかるという緑の光線。
待つ間に彼女は涙を流す。
自分の心の中がわかったのだろうか。
緑の光線を一目見たく、
日没の瞬間を息を飲んで見つめるシーンで、彼女たちと同化する。
感動は彼女の喜びと共に伝わってくる。

“心という心の燃える時よ、来い”


2022レビュー#5
2021鑑賞No.461
空海花

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