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フィツカラルドのTSのレビュー・感想・評価

フィツカラルド(1982年製作の映画)
3.6
【船の山越えは名シーン】76点
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監督:ヴェルナー・ヘルツォーク
製作国:西ドイツ
ジャンル:ドラマ
収録時間:153分
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発掘良品第37弾
どうやらヘルツォーク監督とクラウス・キンスキーはペアを組む事が多いようですね。『アギーレ/神の怒り』に続き密林の川を渡るということで、余程未開の地に関心があるのかと思わされてしまいます。今作の船を川から引き揚げて、山を越えていくシーンは映画史に残る名シーンと呼ばれています。CGも何もなしにあれをやってのけた、ヘルツォークの熱意はたまた狂気を感じられます。

19世紀末の南米。フィツカラルドは未開の地に文明の光をあてるべく、オペラ座を作りたいと考えていた。その資金を調達するために蒸気船で密林に行きゴムを採取しようとするのだが。。

考えが狂気染みています。夢や目標を持つことは大切なことですが、ここまで来たら現実離れしています。そのためには蒸気船をも山越えさせてしまいます。涼しい顔をしながらフィツカラルドはとんでもない思想の持ち主です。これを演じるのがクラウス・キンスキーだからまた良いです。

最初新品のような白船だったのに、密林に進むにつれて汚れていく様は、航行の厳しさを物語っています。死ぬわけではないですが解雇処分として一人一人船員が減っていく様、それを仕切るクラウス・キンスキーを見ると、先日鑑賞した『アギーレ/神の怒り』を思い出さずにはいられません。ただ、今作に登場する先住民達はフィツカラルドに好意的なので、アギーレと対照的に描かれている作品だなとも感じました。

150分もあるので中々の大作でして、やはり船を山越えさせるシーンが最大の見せ場であり、そんなことまでしてオペラ座を建てたいのか!という野望が見えて爽快な作品でありました。しかしながら、そもそもこの航行の目的がオペラ座をつくるため、そしてそのオペラ座をつくるのは未開の地に文明を齎すためということなので、どうしても啓蒙主義の考え方があるのだと思われました。転じて、19世紀末なんて帝国主義の真っ最中でもあるため、見方を変えれば必ずしもフィツカラルドが善人とは言えない気もしました。そのあたりが気になったのでスコアは抑え気味です。
もっとも、ヘルツォークはこれを皮肉として撮影しているのでしょう。大したものです。
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