爆裂BOX

ザ・フォッグの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

ザ・フォッグ(1980年製作の映画)
3.6
「ハロウィン」のヒット後にジョン・カーペンター監督が手掛けた幽霊映画です。
港町アントニオ・ベイで100周年記念祭が開かれようとする深夜、海から濃霧が流れて来て町を覆いつくす。そしてその霧の中から現れた亡霊たちが住民を殺していく。亡霊たちは町の功労者6人によって船を沈められて殺され、黄金を奪われたハンセン病の富豪と乗組員たちであり、復讐のために蘇ったのだった。ラジオDJスティーヴィーは事態に気づき必死で警告するが…というストーリーになっています。
ゴア描写や派手な描写は無い静かな作品ですが、全編に漂う怪談映画のような薄気味悪さが堪りませんね。冒頭、老漁師が怪談話をして0時になった瞬間、電化製品が壊れたり車のクラクションが一斉になり始めたり、飼い犬が海に向って吠え始めたりスーパーの商品が一斉に揺れ始めたりとこれからの惨劇を予感させるような怪現象が起き始める所が不穏さに満ちてて最高ですね。会場で霧に包まれたトロール船の漁師たちが霧の中からヌッとあらわれ一瞬で消える帆船を目撃する所の怪奇ムードも堪りません。後、ゾンビ映画大辞典でも指摘されてますけど、スペインの「エルゾンビ」シリーズからの影響結構強く感じさせますね。記念祭祝う村を死霊たちが襲撃する展開や教会での籠城等二作目からの影響大きく感じます。
何といってもこの映画の真の主役と言える生き物のように海上から現れて町を覆う霧の演出が素晴らしい。青白く発光しながら町の通りに突然うねりながら現れ前方を塞いだり、ドアの隙間から室内に忍び込んで来たり、光と影を使った演出で幻想的な怖さと美しさ感じさせる映像作り出してると思います。霧に包まれた電話線や発電機が壊れていく所も霧の中の亡霊だけでなく霧そのものが邪悪な存在と感じさせます。亡霊たちが死ぬ原因になった企みを成功させたのも霧だし、この霧が今度は亡霊たちの復讐に力を貸した真の悪そのものなのかもと思いました。
霧の中から現れる亡霊たちの演出も不気味さと美しさ、カッコよさを感じさせます。最初のトロール船の初登場シーンや教会のシーンもそうですけど、「ハロウィン」のマイケル・マイヤーズといい、ただ立ってるだけで怖さを感じさせるカーペンターは凄いですね。見た目は何か黒い襤褸を纏った人いう感じなのに(笑)一瞬アップになった顔面は水死体っぽい色の皮膚とゴカイはってましたね。サーベルや鎌で突き刺したりと攻撃は物理攻撃ですが(笑)
主人公のラジオDJをカーペンターの元奥さんエイドリアンヌ・バーボーが演じててセクシーな声でラジオ放送してます。カーペンター映画常連のトム・アドキンスに「ハロウィン」から引き続いてジェイミリー・カーティスも出演してますし、母親のジャネット・リーが町の議長役で、秘書役でナンシー・キーズや脇役でチャールズ・サイファースや「要塞警察」のナポレオン役ダーウィン・ジョンストンも出てますね。赤い目の亡霊のリーダーブレイク役で特殊メイクも手掛けたロブ・ボッティンも出演しています。
ラジオDJスティーヴィー、ニックとエリザベスのカップル、神父とキャシーとサンディと三者でそれぞれ異常事態に気づき町の過去に迫っていく流れもテンポよく描かれて面白いですし、霧に追いやられて教会に籠城して亡霊たちの襲撃受ける面々と、灯台で亡霊に追い詰められるスティーヴィーを交互に描く終盤はハラハラできて良かったです。でも、亡霊の復讐人数が6名と決まってるせいで、電話が不通になったり電気止まったりと大事になりそうに盛り上げながら小さくまとまった感はありますね。折角記念祭開かれてるっておいしい設定盛り込んだのにそっちは襲われないし。亡霊も子孫襲うかと思ったら無関係な人殺していって、最後だけ子孫襲いましたが、町の住人6名殺せればそれでよかったのかな?
無事全て解決したと思わせて…からのラストはホラーらしく、そしてあのラストショットはカッコよすぎる。
カーペンター作品の中では地味で好き嫌い分かれそうな作品で(実際興行的には失敗したけどその後ジワジワ人気出てきたそうですが)、個人的には全編覆う不気味な雰囲気と怖さと美しさ感じさせる霧の演出が好きな作品です。