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怪談のKUBOのレビュー・感想・評価

怪談(1965年製作の映画)
5.0
これは芸術だ。これこそ日本の芸術!

昔、何度か見ようとトライしたんだけど、眠くなってしまって途中でやめてしまっていた小林正樹監督作品『怪談』をついに最後までしっかり見た。かなりの満足感!

ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の原作を、当時のオールスターキャストで映画化した3時間越えの超大作。「黒髪」「雪女」「耳なし芳一」「茶碗の中」の4部構成のオムニバスだ。

伝統芸能にも通じるようなゆっくりとした間(ま)。場面によっては所作も舞踊のよう。台詞も少なめで、音楽も琵琶や古典楽器を使ったものがメインだ。

全てがセットの中で撮られている撮影方法も狐狸妖怪が跋扈する異世界感を醸し出すのに一躍かっている。

「黒髪」の破れ屋のセットのリアルな痛み方。「雪女」のマットペインティングによる妖しい空(大林宣彦作品にも通じるものがある)。「耳なし芳一」では壇ノ浦の戦いを当時の大プールでの撮影で再現。平家の武者たちがずらっと居並ぶ様は豪華絢爛だ。

生まれた時からおじさんかおばさんだった昭和の名優たちの若かりし頃の競演も貴重だ。「黒髪」の若き新珠三千代の清純な美しさ! 『釣りバカ』のスーさんの印象が一番強い三國連太郎の若い姿が息子の佐藤浩市にダブる。

「雪女」は岸恵子だ! 若き仲代達矢は超イケメン! 最近の老いた姿しか知らない人は必見だよ。

「耳なし芳一」の芳一は中村嘉葎雄! 『20世紀少年』の神様は、この頃はまだ少年だ!

「茶碗の中」のラストではマジでぞっとさせられる!

私もジェイソンやチャッキーで育ってきた身だから、昔はこの古典的な趣の良さがわからなかったけれども、改めて最後までしっかり見れば、これほど日本の怪談を芸術まで昇華させた作品は他にはない。

私はこれはBlu-rayにダビングして永久保存! 敷居が高いことは確かだけど、意識高い映画ファンには必見の傑作だ!
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