モリアーチー

魔の家のモリアーチーのレビュー・感想・評価

魔の家(1932年製作の映画)
3.5
DVDで1932年製作のアメリカ映画『魔の家』を鑑賞しました。『バット』や『猫とカナリア』の流れを汲み、原題の「オールド・ダーク・ハウス」が代名詞となった、「古く暗い屋敷での怖い体験」映画のジャンルを確立させた古典的な名作で、『フランケンシュタイン』のジェームズ・ホエールが監督したユニバーサルホラー映画の一本です。

前半は酷い嵐に遭遇して、ウェールズの片田舎にあるお屋敷に助けを求めてやって来た二組五人の遭難者と、嫌々ながら五人を受け入れる屋敷の住人との珍妙でとぼけたやりとりが演劇的に延々と続きます。

助けを求めてきた5人をメルヴィン・ダグラス(後に『チャンス』のベンジャミン)、グロリア・スチュアート (後に『タイタニック』の101歳老ローズ)、レイモンド・マッセイ(後に『エデンの東』のお父さん)、リリアン・ボンド、それに渡米して初出演作となる名優チャールズ・ロートンが演じており、今から見るとけっこう豪華な顔ぶれです。

屋敷側はレベッカとホレースのフェム老姉弟、それにボリス・カーロフ演じる顔が傷だらけで話すことのできない執事モーガンです。五人の遭難者は若者ばかりですが、屋敷の住人はかなりの高齢です。そのギャップがまた笑えます。

ホレースが夕食時に「イモをどうぞ」と繰り返したり、レベッカが「ベッドは貸さないよ」を繰り返したり、コメディ演出も多くあります。後に『フランケンシュタインの花嫁』でプレトリアス博士、また『月光石』で悪い使用人を演じて何度もボリス・カーロフと共演することになるアーネスト・セジガーがいかにも臆病なホレースをコミカルに演じており、苦笑を誘います。

後半になるとおとなしかった執事のモーガンが突如酒を飲んで暴れ出します。酒乱だったのです。自分の部屋に逃げ込むファム姉弟。そこからは唐突な恋愛模様ややはりあったかと思わせる屋敷の秘密が絡んでのドタバタ騒ぎがラストまで続きます。

意外な登場人物とモーガンの関係性や、女性陣が全員おバカで自分勝手に描かれている等、今から思えばジェームズ・ホエールの指向が出ているのだろうかと穿った見方をしてしまいますが、公開当時なら素直に怖がって笑ってという楽しみ方ができたのでは?と思いました。
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