ないで

ラジオ・デイズのないでのレビュー・感想・評価

ラジオ・デイズ(1987年製作の映画)
3.5
第二次大戦開戦間近のアメリカ。ユダヤ人家庭の少年ジョーは、ラジオ番組「覆面の騎士」の指輪を手に入れようとイスラエル建国の為の募金に手をつけて周囲の大人から大目玉を喰らう。一方で素敵な結婚を夢見る叔母のビーはウェルズの「火星人襲来」を真に受けた交際相手に置き去りにされるという体験をする。

何気にジョーは周囲の大人から手を上げられまくっていて、現実のウディもそうだったのかな・・・きっと厄介な子どもだっただろうしなと思ってしまう。そんなジョーにまた手を上げようとしていた父親が思わずその手を下ろしたのはラジオから流れてきた井戸に落ちた少女のニュース。安否を気遣って中継に耳を傾ける多くの人々。一見美しい光景である反面、我が子のことは殴るのに、見ず知らずの子どもの無事には心を合わせて祈ってしまうというメディアがもたらした矛盾を捉えたシーンでもありそう。

ラジオの中側の人物として、ミア・ファロー演じるスター志望のサリーのストーリーが挿入される。タバコ売りの下積み時代から命懸けでチャンスをつかんだと思ったら真珠湾攻撃のせいで出番を失う。しかし一念発起して発声法を学び、念願のラジオ・スターとして成功する。

ウディ・アレン作品だし、いつかジョーとサリーは出会ったりするのかなと思いきや、二人の運命は全く交差しないまま、終戦前夜のニューイヤーパーティの場面で映画は終わる。ただしサリーの傍らには、覆面の騎士役のウォレス・ショーンがいて、周囲から小突かれる少年が覆面の騎士として銀幕の中へ逃げ込むのはもう少し先の話だということだったのかも。
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