ジャン・コクトーが描く冥界のオルフェウス。
ギリシャ神話のオルフェウスは亡くなった妻を探しに冥界に降りて行き、無事に妻を連れ戻せるか…という所で「振り向いてはいけない」という約束を守れなかった為に…というとっても人間っぽいお話。
こちらのオルフェは死神に愛され過ぎて自らも死神に心を奪われ、妊婦の妻に暴言を吐く様な自己中な男として描かれている。
死神のマリア・カザレスが黒いドレスに身を包み威厳に満ちた美しさで、見ている方も圧倒さてしまうので、まぁ彼女に抗うのは無理だろうとは思う。
主役のジャン・マレーは長い間コクトーの愛人だった様で多くのコクトー作品に出ている。
運転手の男も死神の忠実な部下でありながらオルフェの妻に恋をする、とまぁ色々とフランスらしい。
バイクに乗った2人組の殺し屋とか、ラジオから流れる暗号とか、文学青年の集団に襲われるオルフェとか、理解し難い幾つかの場面は、もしかしたらドイツ占領下を潜り抜けた当時のパリの人達なら理解出来る比喩表現なのかも知れない。
話が唐突に展開して呆気にとられる所も多々あったけど、冥界との出入り口が鏡(姿見)であるとか、生きてる人間はゴム手袋をはめて冥界に入るとか、逆再生をとても上手く使っている映像は当時としてはイケてる(笑)発想の様にも思う。