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ニューヨーク1997のnetfilmsのレビュー・感想・評価

ニューヨーク1997(1981年製作の映画)
4.2
 1988年、アメリカの犯罪は4倍に増加した。政府は増加する犯罪者を収監するため、マンハッタン島に巨大な刑務所を建設した。島は高さ15mのコンクリートの壁で覆われ、遠隔管理による厳重な管理が行われていた。終身刑の重犯罪者たちが押し込まれ、週に1回セントラル・パークに投下される食料の配給以外は、およそ300万人もの囚人による自治に委ねられていた。時は第三次世界大戦の終結の目処が立ったある日、サミット会場に向かう大統領専用機が、過激派に乗っ取られ、マンハッタン島内に激突墜落させられる。過激派のボス・デューク(アイザック・ヘイズ)は大統領を捕虜とし、囚人たちの即時解放を要求。大統領救出のために警察本部長のボブ・ホーク(リー・ヴァン・クリーフ)が白羽の矢を立てたのは、先頃収監されたスネーク・プリスキン(カート・ラッセル)だった。ボブは大統領を無事救い出せば、彼の全ての罪を恩赦にするという。24時間以内に大統領の身柄と機密データを取り戻すため、首に爆破用チップを埋め込まれた主人公が立ち上がる。

 左目にアイ・パッチ、ウェーブがかかった長髪に革ジャンにアーミー・パンツ。正に西部劇のスターを近未来に置き換えた様なカート・ラッセルの姿は、『ジョン・カーペンターの要塞警察』のナポレオン(ダーウィン・ジョストン)の進化系にも見える。黒のノースリーブにくわえ煙草で、一切の笑みさえ見せない無骨すぎる男は、反権力のアンチ・ヒーロー像を確固たるものとする。世界貿易センタービルの50Fに降り立つ姿がもう鳥肌ものだが(マット画をあのジェームズ・キャメロンが手掛けている)、今見返すとその後のやり過ぎないアクションこそが、ジョン・カーペンターの職人たる所以だろう。廃墟となった近未来の街並み、主人公となるスネーク・プリスキンを支えるタクシー運転手のキャビー (アーネスト・ボーグナイン)やかつて仲間だったブレイン(ハリー・ディーン・スタントン)、彼の恋人である荒くれ娼婦のマギー(エイドリアン・バーボー)など、脇役も冴えに冴えまくる。アウトローを支えた個性派たちの最後の瞬間、地下プロレスからカーチェイスに至る均整の取れたクライマックス、警察国家というディストピアを痛烈に批判した今作は、あの『ブレードランナー』よりも1年早く、ウィリアム・ギブスンのニューロマンサーを3年先取りしていた。
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