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オレンジと太陽のmhのネタバレレビュー・内容・結末

オレンジと太陽(2010年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

「ソウルガールズ」でもやってた、オーストラリアの黒歴史「盗まれた世代」の話かと思ったら違った。
こちらはイギリスの黒歴史「ホームチルドレン政策」とそれを明るみに出した「ホームチルドレンスキャンダル」が題材。
そもそもは植民地対策と孤児対策。劣悪な環境にいたイギリスの孤児たちを、カナダ、アメリカ、オーストラリアに移動させて植民地の人口を増やすための制度。幸せになった孤児もいるのだろうけど、この映画に彼らは登場しない。慈善団体を名を騙る悪徳ブローカーが一枚噛んでいて、引き取った先では子どもたちを労働力、小児性愛のはけ口として悪用していたという。
1869 年にはじまり、世界恐慌のあった1930年代には経済的な理由から下火になったものの、1970年代まで続いていたとのこと。
これを「ホームチルドレンスキャンダル」を牽引したソーシャルワーカー視点で追っかけていく展開。
役者さんがうまいのもあるけどシナリオがうまかった。幸せなはずの家族がなぜか引き離されたという(おそらくレアな)ケースをうまく利用していた。子どもをさらって、オーストラリアに連れて行ったみたいな印象に仕上がっているけど、その認識で大丈夫なのか不安になる。「盗まれた世代」ではオーストラリア政府が子どもをさらっているのでごっちゃになる。
経済状態もよかった家族が、どうして引き離されたのか、この映画の中にその答えはなかったように思う。
さらに不幸だったのはここにクリスチャンブラザーズ寄宿学校(「Bindoon Boys Town」とも。作中では「ビンドゥーン」)で行わていた、壮絶な児童虐待が絡んでいたこと。本来、別問題であるはずなんだけど、やっぱり一緒にするしかないような気がした。
お茶の嫌がらせは本当にあのままだったんだろうね。
「すべてが解決する日はこない」という実体験を伴ったセリフがよかった。
孤児出身の大富豪をヒューゴ・ウィーヴィングが演じててかっこよかった。登場時のひねくれっぷりが、パトロンだからとビンドゥーンに乗り込んでいく説得力につながっている。
主人公を指して初めて親身になってくれたひと、おれはなにも感じないなど、やっぱシナリオうまい。
原題である「オレンジと陽光」は、孤児たちをオーストラリアに連れて行くための決まり文句。ヨーロッパ特有のあの曇り空があってこその成句なので、語呂はよくても「太陽」はちょっと違うかな。
びっくりするのは、ケン・ローチの息子さんが監督なんだね。
イギリスの社会問題を扱ってるあたりが父親譲りでますますいいね!
面白かった!
mh

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