てっぺい

きみに読む物語のてっぺいのレビュー・感想・評価

きみに読む物語(2004年製作の映画)
4.0
【胸が詰まり過ぎるラスト】
認知症の老女にとある純愛物語の読み聞かせをする老人。読める展開を逆手にとった奥の深いラブストーリーで、憧れ過ぎる夫婦愛。迎えるエンドはもう胸が張り裂けんばかり。
◆概要
出演は「ラ・ラ・ランド」のライアン・ゴズリング、「アバウトタイム 愛おしい時間について」のレイチェル・マクアダムスら。原作は「メッセージ・イン・ア・ボトル」のニコラス・スパークスによるベストセラー「The Notebook」。監督は「シーズ・ソー・ラヴリー」のニック・カサベテス。
◆ストーリー
療養施設で暮らす、記憶をなくした老女にある男性が物語の読み聞かせをする。それはとある町の良家の子女と地元の貧しい青年の間に生まれた純愛の物語だった。
◆感想
奥の深いラブストーリー。行きつくラストの意味深さや、周りの人間の思いの深さだけでなく、認知症という社会的メッセージも内包していて、とても見応えのある映画だと思う。
まずは映画の芯として、アリーとノアが出会い、愛を育み、別れそしてまた出会うラブストーリーがかなりドラスティック。観覧車でアリーへの猛烈アタックをするノアや、情緒不安定かと思える程情熱と愛情、そしてその裏返しをぶつけるアリー。そんな2人のくっつき離れての繰り返しがもどかしくも惹きつけられる。パッケージにもなっている、365通の手紙が2人の心をつなぐ嵐のシーン、これがとても印象的。
◆以下ネタバレ◆
さらに、認知症の老女に読み聞かせをする老人は?ギリギリまでそれがノアなのかロンなのか明かさない展開も面白い。当然正体はノアで、ある意味読める展開ながら、生涯愛を貫く2人の関係の深さの表現に、むしろ逆手で効果的に繋がっていると思う。そこから一気に老夫婦の思いが詰まりに詰まったラストへ。老夫婦の仲の睦まじさにほっこりするし、2人で手に手を取って天逝する愛の重みは、稀に見る豊かな映画表現で、とても心が熱くなる。
何気にアリーのママが、昔恋をした男性の元にアリーを連れて行くシーンが自分のピカイチ。厳格だった母の、娘への愛に満ちた人間らしい描写であり、アリーへの絶対的な心の揺さぶりでもあって、前述のノアかロンかの振り子の幅をより広げていたと思う。
また社会的メッセージも骨太。“認知症は回復しない”、“神の力は科学の限界を超える”、医療に相反するノアの温かい思い、そして家族の制止も振り切る強い思い、認知症問題への一つの提言も描かれていたように思う。
アリーが夢のようだと話した渡り鳥だらけの池のシーンも美しかった。故郷へ帰る渡り鳥の習性を、2人のラストの天逝シーンに重ねた映像表現もとても豊かだったと思う。
仲睦まじい憧れの夫婦像、自分もそうなれたらいいなと、とても胸アツな映画でした。
てっぺい

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