Mikiyoshi1986

革命前夜のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

革命前夜(1964年製作の映画)
3.9
4月30日はベルナルド・ベルトルッチ監督のかつての妻であり、
彼の初期の代表作「革命前夜」のヒロインとして麗しきジーナ叔母さんを好演したアドリアーナ・アスティのお誕生日です。
本日で御年84歳。

イタリア国内外の名だたる巨匠に認められ、女優としてのキャリアを積み上げていった彼女ですが、
中でもその魅力を最大限に引き出したのは、やはり彼女と恋に落ちたベルトルッチではなかろうかと。

元々は詩人・文学作家として活動をスタートさせたベルトルッチが映画の原案や脚本にも携わるようになり、
その後パゾリーニのデビュー作「アッカトーネ」で助監督を務めた際に出会った二人。(パゾリーニも元々は詩人・作家の出身)

パゾリーニ原案の「殺し」で監督デビューを果たした後、
デビュー2作目に当たる本作ではベルトルッチの自伝的要素を内包した一方で、
アドリアーナの美貌を余すことなくスクリーンに刻もうとするベルトルッチの気概も溢れてます。

舞台はファシズムが終焉を迎えて早17年目のイタリア解放記念日を目前に控えるパルマの街。
青二才ファブリッツィオはブルジョワ階級のお坊ちゃんでありながらも、当時世界中で高まりを見せていた共産主義に傾倒し、
理想と現実のジレンマや美しき叔母との禁断の愛(近親相姦)を経験しながら青春の辛酸甘苦を味わうこととなります。

若さ故に「革命」という理想を追い求めながらも、結局は環境に甘んじて自身の「革命」すらも成し遂げられない、
つまり「革命前夜」のまま虚しく敗北した日々を綴る青き叙情詩。

また、フランスで巻き起こったヌーヴェルヴァーグの衝撃は日本だと中平康「月曜日のユカ」だったり、スコリモフスキ「出発」だったり、とにかく世界中に飛び火したわけですが、
イタリアきってのゴダール崇拝者ベルトルッチも本作にその影響を如実に投影し、即興演出や編集効果を大いに取り入れています。

劇中にはゴダールの代表作「女は女である」について言及され、
その主演女優でゴダールのミューズであったアンナ・カリーナの重要性を説くシーンまであるほど。

本作は当時のベルトルッチの妻であったアドリアーナがそのミューズの役割を担い、
イタリアでいうところのアントニオーニ×ヴィッティの理想像を追随しているとも云えるでしょう。

若きエンニオ・モリコーネが多彩なバリエーションで以て音楽を手掛け、
まだ駆け出しの頃のヴィットリオ・ストラーロは撮影助手として携わっているのも重要なポイント。
そうした若き才能の結集によって産み出されたイタリア版ヌーヴェルヴァーグの歴史的逸品です。
Mikiyoshi1986

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