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河と死のRのレビュー・感想・評価

河と死(1954年製作の映画)
4.0
お茶目な変態、ブニュエルの作品とは思えない、真っ当で立派なメッセージを持った西部劇だった。かなり意外だったけど、これはこれでいい。最後はちゃんと感動した。殺し合いの決闘が違法でなく、殺した方が大きな川を泳いで渡り、墓地のある向こう岸で暮らすなら許される田舎町が舞台。復讐に次ぐ復讐で、恨みが次世代にどんどん受け継がれていって、死の悲劇がエンドレスに連鎖する古い因習に囚われた田舎町に、都会で大学の教育を受け、医者である主人公が帰っていくというストーリー。ただ、そのメインの部分は前半にちょろっと、と、後半だけで、前半はほぼ決闘→恨み→決闘→恨みと繋がっていく殺し合いのバカバカしさと、それを終わらせようとする主人公の叔父さんの姿が描かれる。とりあえず、ラテン系の名前が聞き慣れないのと、顔面、服装がみんなそこそこ似てるため、誰が誰か非常に分かりにくいという難点が。よって前半はかなり見づらかった。途中で面白かったのは、後半に入る直前くらいに、もう一回この村の掟がナレーションで紹介されるんやけど……なんでこのタイミングで⁈笑 後半になると主張もハッキリして分かりやすい上、ドラマチックで面白かった。ブニュエルは本作の伝えるメッセージがあまり好きでないらしいが、個人的には結構真実を突いてると思う。やはり人間の命の尊厳性に気づいてない間は、人間は野蛮だと言わざるを得ないし、野蛮状態から抜け出すには、学が要る。また学がないのならば、文化や芸術などに触れることが絶対必要だと思う。あと、名誉についても考えさせられる。名誉なんてな気分だけの問題であって、まったく人間の本質的な部分には関係ない、なのに、くだらない名誉のために命を無駄にする不毛さは、ほんとにバカげたことだなぁ。
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