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酔っぱらった馬の時間
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『酔っぱらった馬の時間』に投稿された感想・評価

Jeffrey

Jeffreyの感想・評価

4.5
‪「酔っぱらった馬の時間」

‪冒頭、イラクとの国境にほど近いイラン領クルディスタン。両親の死、5人の兄妹、生き抜く、険しい山岳地帯、冬の季節、極寒の密林キャラバン、少年、白銀の世界、武装した国境警備隊と地雷。今、生きる為に少年は国境を越える…本作はキアロスタミの助監督を務めていた自身もクルド人であるバフマンコバディ監督のデビュー作にして最高傑作であり、なおかつ2000年のカンヌ国際映画祭でカメラドール新人監督賞を受賞し、それを皮切りにシカゴの映画祭やそれこそ東京フィルメックス特別招待作品にもなり、キネマ旬報ベストテンでは外国語映画の第6位にもなった。

さて、今もなお解決しない世界最大の少数民族とされるクルド人の事柄に言及する。アラブ人とペルシャ人と並ぶ中東の先住民と言う事は誰もが知っている通りで、トルコやイラン、イラク、シリアにまたがる山岳地帯に居住し、その地域をクルディスタンと言うのも周知の通りだ。

クルド人居住区域は黒海側にあるトルコ、そこからカスピ海に向かうにつれ、アルメニアがあり、アゼルバイジャンがある。その下にはイラン、そこから左に回り、イラク、バグダッド、シリア、その中心にクルディスタンがある。正直クルド人と政治の問題もここで語りたいが、そうすると長くなってしまうので割愛させてもらう。それにこの作品には極力政治を挟んでいないので…。

だがクルド人と戦争に対しては語らなくてはならない。日本ではイライラ戦争と揶揄されたイラン・イラク戦争は1980年から88年までに両国の国境地帯で行われた戦争だが、サダム・フセインのイラク政府が毒ガスにより、5000人のクルド人を虐殺した"ハラブジャ事件"と言うのをぜひ知ってほしい。これは確か当時、広島や長崎への原爆投下に指摘する蛮行な行為として、国際的に非難を浴びたと記憶している。

やはりイラン映画を見るにあたってもっと深く知りたいと言う気持ちがある方にはお勧めしたい書籍が何冊かある。クルド人とクルディスタンもしくは岩波イスラーム辞典、世界紛争地図、民族世界地図などは分かり易い。本作は冒頭暗い画面から始まり、そこで監督のメッセージを読み上げた後に、少女が監督らしき男性に質問され色々と答えている。割れ物であるコップ等を新聞紙に巻いて仕事する兄妹の健気な姿には感動してしまう。

そして何十人の子供がバスに乗り雪山を越える。途中で検問にあい、それぞれ体に隠し持っていたノートを奪われてしまう。そして、そこからは徒歩で吹雪の中を歩く。吊り橋を渡ったところで、長女ロジーンが死んでしまった父親に向かって、嘆き始める強烈な描写がある。

さて、物語はイランイラク戦争の影響により生活が非常に苦しく厳しい状態に陥った山岳地帯に住むクルド人の兄妹を軸に、地雷を踏んでしまって死んでしまった父親の代わりに、難病に犯されている長男マディを助けるべく、手術費用を稼ぎに行く。まだ少年にもかかわらず一家を支える為に密林のキャラバンに加わり、過酷な道のりを行く。また手術費用を工面できなかった次男の代わりに母親代わりの長女が結婚をしてしまう。また次女はコップを新聞紙で包む仕事で手伝い。そうした中、クルディスタンの美しい雪景色の中で残酷極まりない現実を描いた作品で、圧倒的な感動を与える正にキアロスタミ以降のイラン映画の巨匠になりつつある。

バスに乗る子供たちがみんなで歌う歌の歌詞が強烈すぎて印象的だ。"日々の生活は疲れる子供でさえ老いてしまう、厳しい生活は若さを奪う"と言う趣旨の歌詞である。また少しばかり身体的特徴な障害を持った少年の描写が、厳しい生活をより深刻に描破している。それは薬を飲む際に水がないから唾で薬を飲めと言うシーンなどである。それと劇中のタイトルの意味を理解できるワンシーンで極寒の山越えをする前にラバの飲み水にウイスキーを注ぎ込む運び屋の画は印象的に残る。

また次女のアーマネの独白も意味深く、このストーリーには重要な場面である。面白いのは語り手が少女なのにもかかわらず、カメラが基本的に描写するのは少年である。それに学校でライト兄弟の人類初飛行を学んでいるアーマネの姿とそこにノートを届けにきたアヨブ(兄)も心に残る。この映画は絶望に絶望重ね合わせたかのような残酷極まりない事実ばかりで、本当にショックを受ける。

まず、父親が亡くなって家長として日々頑張るアヨブが可哀想でならない…それは家長である自分の知らないところで長女が縁談を進めて嫁に行ってしまう出来事や他人を助ける為に必要な薬が結局自分の力で資金を徴収できなかった事によって結婚が成立しまったと言う罪悪感もあり、また自分1人の力じゃラバの背中にタイヤと言う大きな荷物を運ぶ事ができない無力感、それが1人の少年にのしかかるそのシークエンスを見ていると、胸が張り裂けそうになってしまう…他にもあるが、それが何かを伝えてしまうとネタバレになってしまうので言えないのが歯がゆい…。

この絶対権力を持てない子供が結局は、タダ働きをしてしまったり、地雷原を抜けていくしかなく、警備隊と言う敵の待ち伏せにも遭遇しなくてはならない過酷な旅が、映画から伝わるも、見る側はただ、目頭を熱くするだけで、何か行動しようと思わないのが辛い…そして病気の長男と一緒について来ちゃった妹に対してお兄ちゃんが叱ってぶってしまう姿なども痛々しいし、その後に仲直りする場面も心温まるが、過酷な現実は1ミリも変わらず、映像はどんどん観客を支配していく…。

これ大人も子供も辛いと思うが、巨大なタイヤを背中に付けられるラバも大変だろう。というか、タイトルは馬と言うものが付いているものの、実際は交配種のラバである。他にもクルド人監督で確かパルムドール賞に輝いたユルマズ・ギュネイの「路」などもお勧めできる。他にも「敵」「群れ」「希望」なども良いが、遺作とされている1983年の「壁」を早くみたい…。‬

本作を見て、心揺さぶられるシーンがあるのだが、それは15歳の長男の命がもう短いと言うことをわかっている次男や姉が、それでもこの難病を治すべく、嶮しい山岳地帯を酒に酔わしたラバとともに降りていくと言う事実だ。

毎度イラン映画を見て思うのが、やはり子役の涙がものすごいのである。演技とかそういった次元をはるかに超えている。当然この子たちも監督自身が探し出した子供たちで、周りのエキストラも多分地元の人たちだろう。キアロスタミの作品もそうだし、マフマルバフ、ジャリリの映画に出演している子供たちの芝居はどれも本物である。

最後に、この不条理な場所で、守ってくれる国も無ければ、共同体も無い時は一体、誰に助けを求めればいいのだろうか…そんなメッセージが見え隠れする様に感じてしまったのは私だけだろうか……。あぁ、、あの有刺鉄線の先に少年は何をみたのだろうか…。

この点はアンゲロプロスの「霧の中の風景」のラストと重ねてしまった。本作は大傑作であり多くの人に見て欲しい。家族愛が好きな方、ドキュメンタリーが好きな方、不条理な映画が好きな方、スペクタクル超大作が好きな方、ヒューマンドラマが好きな方、アクション映画が好きな方、そして美しい自然が好きな方はぜひ見て欲しい。

‪余談だが、カメラ・ドール部門審査員長を担当したオタール・イオセリアー二がかなり絶賛していた。因みにその当時同じイラン監督のハッサン・イェクタバナーも「ジョメー」で受賞してる。さらに劇中の姉妹は実の兄弟であり、さらに監督の短編映画として成功を収めた1つである「霧の中の人生」にもその2人は出演しているようだ。

こちらはまだ未見なので何とも評価しにくいが。もともとこの兄妹をこの作品に当てようとしたのは、市場で出会った少年に映画に出たらお金をあげるよと言った際に、彼がお金はいらないからノートと鉛筆が欲しいと言われたのをきっかけに、監督が興味を持ち始め、この作品に出演が決まったそうだ。‬

イーストウッドの運び屋が長寿者の話なら、本作は最年少の運び屋だ…。で、フリードキンの恐怖の報酬が嵐の険しさを映すスペクタルなら、本作は雪の険しさを映すスペクタルがある。

ぜひ見て欲しい映画だ。
久々に見たけどやっぱ動物虐待含め最後のイメージが強烈過ぎてもうそれしか思い出せない……。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

4.0
【哀しみのデス・ロード】
今Twitterで私の作った #オススメイラン映画10選 ハッシュタグが盛り上がっているので、MUBIにて配信されているイラン映画『酔っぱらった馬の時間』を観てみた。

少年/少女がクルディスタンの町で、コップを売る。少年/少女は日々を生きるため日銭を稼がなくてはいけない。だからこそ、トラックが出発する時間になっても、おじさんのところに群がり金をせびる。

主人公のアヨブは家族と一緒に障がいを持った兄マディを介抱しつつ、毎日遠い道中を往復して日銭を稼いでいた。しかし、ある日父が死んでしまったため、アヨブは兄弟共にいつも以上に稼がなくては行けなくなる。

本作は、所謂中東の貧困を描いた作品なのだが、よくある貧困映画のようなリアリズムを描いておけば賞を獲れるだろうといった高慢さはない。常時走っている、子どもたちの躍動感。そして雪山でドンドンHPが0に近づきある障がいを抱えた兄という時限装置が、シューベルトの『魔王』ばりの緊迫したリズムを生み出す。

そして何よりも力尽きていく馬たちを無理やり引っ張り、坂からゴロゴロとタイヤが落ちていく様子のあまりに危険な姿にハラハラドキドキさせられるのだ。

たった80分の短い映画ながら、ひたすらに過酷なデス・ロードを爆走する少年たち。この破壊力に脱帽しました。

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