ちろる

オテサーネク 妄想の子供のちろるのレビュー・感想・評価

オテサーネク 妄想の子供(2000年製作の映画)
3.6
不妊で子供ができない夫妻の夫ホラークは、子どもが欲しくて精神を病んだ妻を慰めようと人型に似た『切り株』を与えてみたら、妻は大喜び
その後、妻はその切り株に「オティーク」と名付け、まるで本当の我が子のように可愛がる。

どこからどう見ても切り株に、妻が献身的に、母性の全てをぶつけて可愛がるその姿は哀れで、恐ろしい映像である。

しかしやがて、このオティークの体が動き・喋ったり、お腹が減ったと泣き出すようになるのだから物語はとても不気味な展開となっていく。

こちらは『アリス』(88)、『ファウスト』(94)など、のチェコの鬼才ヤン・シュヴァンクマイエルがに撮り上げた作品。
チェコの民話「オテサーネク」を下敷きとした作品なのだが、さすがチェコ、さすがヤン・シュヴァンクマイエルと唸りたくなるダークすぎるファンタジーである。

生命らしきものが宿った切り株が、やがて無尽蔵な食欲で人間を喰い散らかしていく様子を、隣人で唯一真実を知る少女の視点を交えており、この妻のみならず、この孤独な少女までもがこの切り株に魅せられていくその様子も恐ろしい。

シュヴァンクマイエル好きなら耐えなきゃと思うのですが、それにしても生理的にムリ!という描写が後から後から舞い込んでくるこの作品。
もちろんこれらの描写こそがこの作品の見どころでもあるのでしょうが・・・
切り株がべちょべちょ、ドロドロと食べ物を貪り食べる姿が汚らしいし、何より、ストップモーションで表現される切り株の滑稽な動きと生々しい泣き声がちょっと夢に出てきそうで、
デビットリンチのイレイザーヘッドを思い出した。
そして、少女を見るたび興奮するロリコンのジジイも忘れがたい存在となって、見事に不快な思いにさせてくれる。

観ていると次第に、心が不安になり落ち着かなくなり不安定な気持ちにさせられる、それこそシュヴァンクマイエル作品。
多分2度目に見返すことは無いとは思いますが、シュールな映像と独創的な世界観の中で描かれる盲目的な「母親」の姿には考えさせられるものがあり、長編という事で、ストーリー性、そしてエンタメ性のある作品に仕上がっていた。
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