1965年 監督は大場秀雄。「君の名は」(アニメではありません)の監督だ。
岩下志麻が一番綺麗な頃の「雪国」。名作だ。(※こんな傑作の視聴が84人。驚く。)
1957年版岸恵子の「雪国」も有名。
原作は言わずと知れた川端康成。一度は誰も手に取っているだろう日本文学史上の名作中の名作。しかし、その味わいは年をとった今だからわかる。今度、改めて観直してそう思った。
岩下志麻の駒子は、木村功演じる島村への愛と実らぬ恋のやり場のなさを、時に愛らしく、時に切なく、時に激しく演じて、愛おしい。
島村は駒子の思いは充分わかっていても、自分の生活を壊して、そこには飛び込めないだけに、実は愛が際立っている気もする。そうありたいと川端康成は思ったのだろう。
いい気なもんだと、言われそうな愛し方だが。
駒子が言う「一年に一度しか来ない人なのね」
島村は返す言葉もない。はぐらかすしかその真っ直ぐな言葉には向き合えない。
そして物語の終盤になって「私は罪深いことをしている。」と言う。ずいぶんと鈍感な男だ。だから逆に駒子も愛さずにはいられないということもあるかも知れない。それが恋愛なのかも知れない。
雪国で出会った芸者を愛し、その生活に踏み入ることはしないまま、観察者のような目線でその哀れを描写する姿勢は、初期の「伊豆の踊り子」の延長線上にある気がする。
駒子の岩下志麻、どのシーンも絵のように美しい。どのシーンも名作の匂いがする。ヘップバーンの映画やジェームス・ディーンの映画を観ているように一つ一つのシーンを切り取っても全て絵になる。着物が本当によく似合うし、帯の美しさ、着物の美しさ、どれも素晴らしい。
ラスト近く、駒子が自分の置かれている立場を嘆いて、雪の中に足袋のまま駆け出すシーンがある。静かに降る雪の中、立ち止まった駒子はどこからか聞こえてくる三味の音に合わせて舞い出す。このシーンを是非観てほしい。素晴らしいとしかいいようがない舞。その素晴らしさに鳥肌が立つ。まさに名シーンだ。
※後日談
木村功はいい俳優でこの当時島村を演じきれる俳優はそういないと思う。ただ佐田啓二が実はこの役をやる予定だったいう話を聞いて、佐田啓二の島村はきっと最高だったろうと思った。観たかったなぁー。
2022.11.18視聴-509