チャンドラー

僕の村は戦場だったのチャンドラーのレビュー・感想・評価

僕の村は戦場だった(1962年製作の映画)
4.1
おそらく、文明批判の映画。
おそらくとエクスキューズを付けたのは、タルコフスキーがそんな単純な映画を作るはずがない、というつまらない信仰心がためである。
母妹と過ごす、イヴァンのハッピー•チャイルドフード。しかし、彼が知恵の実たる林檎を口にした瞬間から、歯車は狂い始める。(このシーンで妹は知恵の実を食べることはなく、ただ兄を恨めしげに見つめる。馬はこれを食べるが、運搬を担う馬は後に運搬に加え殺戮も担う戦闘機になるのであろう。)知恵の実による文明化が彼にもたらしたものとは、戦争であり、家族の死であり、復讐心であり、挙げ句の果てには自分の死である。もちろん、敗戦国ドイツも同様の状況である。ナチス幹部は家族を殺し、自死を選ぶのである。その後映し出される、戦勝に喜ぶロシア軍と、イヴァンの死を知ったガリツェフとの残酷な対比。物語ラストは、生命の樹の周りで戯れるイヴァンとその妹の描写。妹を追いかけ追い抜く彼の姿は、その後の運命を悲しく暗示する。

タルコフスキーの基本ツールである、水や火や霧はあちこちに散りばめられている。が、技術的には「守破離」の「守」の段階だろう。黒澤の画面効率のいいカメラワークと、溝口の美しいコントラストの合わせ技。師匠のいいとこ取りである。後に彼は、溝口のヌルッとした感じを誇張して、「0.8倍速の様式美」を確立していく。ただ、音楽は所々不愉快。耳のいいタルコフスキーのことだから、意図的なのだろうが。ビートルズのレヴォリューション9のような印象。「異化効果」とかいうやつかな。知らないけど。
余談だが、タルコフスキーの弟子だと勝手に思っているズビャギンツェフも、デビュー作でヴェネツィアグランプリ取ってる。偶然だろうけど。