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吉原炎上のkanacoのレビュー・感想・評価

吉原炎上(1987年製作の映画)
3.6
明治末の吉原遊廓。そこで春を売る女郎たちの壮絶な生き様を描く人間ドラマ。ヒロインとなる4人の花魁が〈悲惨ながらも苛烈に生きたその姿〉を主人公と鑑賞者に鮮烈に見せつけます。波乱万丈でショッキングなストーリー、女優たちの鬼気迫った迫力の演技と晒すヌードなど刺激的ながら惹きこまれたかも🥺(140文字)

****以下ネタバレあり&乱雑文****

◆あらすじ◆
明治末。親の借金のために吉原の中梅楼に女郎として売られてきた18才の久乃。「若汐」という源氏名を与えられるが、最初の客を迎えた日に羞恥心から逃げ出してしまう。追われる途中で久乃は娼妓の自由廃業運動をしている古島信輔と出会うが、結局は店の者に捕まり激しい罰を受け、中梅楼の一番花魁から直接手ほどきを受ける。色々な花魁と交流を持ちながら日々を過ごす中で、久乃は徐々に花魁としての自尊心を芽生えさせ、吉原の伝統である花魁道中を自分が復活させたいという夢を持つようになるが…。

❶明治末の吉原遊廓。そこで春を売る女郎たちの壮絶な生き様を描いた人間ドラマ

江戸時代に江戸郊外に作られ江戸幕府によって公認された日本最大の歓楽町、吉原遊廓。舞台は明治末。吉原遊郭の〈中梅楼〉で春を売る女郎たちの壮絶な生き様を描いた人間ドラマです。

親の借金のために吉原の中梅楼に売られてきた18才の久乃が女郎時代〈若汐〉を経て花魁〈紫太夫〉となり、さらに花魁の頂点へと上り詰め、吉原遊郭の伝統である花魁道中を叶えるまでの道のり。また、その過程の中で馴染み客・古島信輔との間で揺らした愛の行方が本作の主軸となっています。

主人公は一貫して久乃ですが、物語の構成は春、夏、秋、冬と季節の章立てに分かれており、久乃とは別の花魁を季節ごとにヒロインにとして置いています。各花魁たちの女郎となった理由や花魁、または女として信念、情念は様々です。〈吉原遊郭〉で生き残った者、生き残ることができなかった者などその末路は様々ですが、全員が〈悲惨ながらも苛烈に生きたその姿〉を久乃、そして鑑賞者に鮮烈に見せつけ、それが久乃が花魁としての自覚や自尊心を芽生えさせるのに影響していきます。

❷見ていると暗い気分になるのに、惹きこまれてしまう刺激的な作品。

この華の吉原への道は2つあると言えましょう。
男が通う極楽道、娘が売られる地獄道。

…という岸田今日子のナレーションから始まる本作。

親や夫、恋人の借金や裏切りのために吉原遊郭で春を売る女たちの生き様は壮絶です。この世界には『嘘』があるだけ。男たちの一時思いつきや瞬間的な感情のみで囁かれる実の伴わない戯言に、期待を寄せるフリをしながら実は全てを諦めている者、妄信して追い詰められていく者、狂気のように縋りつくしかない者、分かっているのに搾取され続ける者、そしてそれを利用する者…など、主人公の〈若汐〉と季節の章の花魁5人はみんな違う生涯を送りますが、その結末には全員に悲哀とインパクトがあります。

そういうわけで、見ていて地獄のような気分を味わう映画です。それでも惹きこまれてしまうのは、その波乱万丈でショッキングな興味深いストーリーと女優たち(名取裕子、二宮さよ子、西川峰子、藤真利子、かたせ梨乃など)の鬼気迫った迫力ある演技、彼女たちが体を張ってさらけ出すヌード姿、遊郭という華々しい豪華な舞台や衣装や小道具を揃えながらもどこか“だらしない”様子から醸し出される〈浮世感〉と〈世俗感〉の間で揺れるエロティシズムなど、刺激的なところが多いように映るからかなぁ🤔

❸主人公〈若汐〉と馴染み客〈古島〉の関係について

主人公〈若汐〉と馴染み客〈古島〉の関係について、お互いに伝わることはなかった〈嘘〉の裏に隠された〈真の想い〉があったかとは思いますが、この2人、そりゃぁ全く交わらないだろうなぁ…と思いました🙄本作を見ながら全然違う映画かつ性格をした男女になりますが、レオナルド・ディカプリオ版(っていうかそれしか見てない)『華麗なるギャッツビー』を思い出しました。双方の〈真の想い〉は本物なのでしょうが、そもそも自分の願いや理想をフィルターにかけ、自分の良いように想いを寄せているだけで、結局その人自身を1ミリたりとも見ていない…というかそもそも見ようとも思っていない気がしました🙄

〈若汐〉と古島の当人同士の不毛な恋愛の“もつれ”は2人の問題なので良いとして、これまた古島が勝手に〈かつての若汐〉へ重ねたのであろう故に引き合いにだされ、誰よりも真っ先に炎にまかれたであろう全く無関係の〈お春〉があまりにも可哀そうに思いました。少なくとも吉原遊郭という混沌とした〈嘘の約束事しかない世界〉を燃やし尽くすような〈浄化〉を担うのを、〈自分の信念や感情や理想〉と〈何も変えられず、何も伝わらず、ただ失うばかりの現実〉というあらゆるズレによって、寡黙にも自暴自棄気味に延々と振る舞ってきたように映る“あなた”がするのはシンプルにテロリスト…とか思ってしまった(辛辣)🙄

まぁ、〈古島〉がランプが倒れたのを見た時、火事がおこるなど1ミリも思わなかったというのなら話は別ですけど(そんなわけはないと思いますが…)。5人の花魁たちよりも〈古島信輔〉というキャラクターについての方が、鑑賞者によって感情移入や考察、意見が変わってきそうですね。

🌺🐝「若汐(名取裕子)と九重(二宮さよ子)の女性同士の濃厚濡れ場シーンで「はわわ~😳」となり、吉里(藤真利子)の末路で「ひぇ~😱💦」となったのに小花(西川峰子)の末路がさらにその上を行くインパクトだったのでビックリしてしまいました。えーん、辛い😂」
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