よっこ

二百三高地のよっこのレビュー・感想・評価

二百三高地(1980年製作の映画)
3.8
前から観たかったけれど何分長いもので、、
ゴールデンカムイからこちらを観る方がいらっしゃるようですが、私もニ百三高地の激戦が気になりようやく鑑賞。

あおい輝彦演じる小賀武志というロシア文学を愛する教師を中心に描かれているのですが、個人的には実在した乃木将軍が気になって乃木希典の視点で観てしまいました。

因みにNHK「坂の上の雲」の乃木さん役は柄本明さんでしたね。
仲代達矢さんの乃木将軍は人格が滲み出ているようでした。

さて日露戦争、幼い頃なぜか父が子守唄代わりに「さっさと逃げるは露西亜の兵〜」とかいう軍歌らしきものを歌ってくれたのを思い出してしまった。

大国ロシアに勝ったと言っても地理的、ロシアの内政的な事情が影響しており、決して確実に勝てた戦争ではなく、特に悲惨な二百三高地の激戦は与謝野晶子の「君死ニタマフ事ナカレ」が語っているように若い命が無駄に犠牲になった事が悲しくてならない。

乃木将軍はじめ歴史の教科書に出てくる政治家や軍人だけでなく、この戦争に関わった市民や一兵卒の背景が丁寧に描かれている。

どの時代の戦争も上層部が屋内の机上で戦術戦略を練っているその最中に、下級兵士達は寒空の下で凍えながら、やるかやられるか生きるか死ぬかの極限状態にいる。

人格者と言われた乃木希典が背負った苦悩、当時の戦術や情報戦の限界があったにせよ、多大な若者の犠牲を出した責任と重圧は計り知れない。

知的で外国文学を敬愛する当時としては先進的な小賀は戦争によって理性を失い変貌してしまう。

杉元佐一も然り、生き残った者は元の自分に戻れるのだろうか。

人の心をも変えてしまう戦場で国家の利権の為に戦い犠牲を強いられた若者たちが無念でならない。

今もある質素な乃木邸、跡取りなき乃木家の青山墓地の慎ましい墓、この戦争がなければなかったかもしれない乃木坂という地名。

乃木坂46のファンの聖地でもある乃木神社がこのような悲しい戦争の後にでき、今は老若男女問わず多くの人が立ち寄れる場所に。

映画自体は役者陣も豪華で、戦闘シーンの迫力、塹壕や地下壕、高地の再現も見事でした。
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