前方後円墳

ラストシーンの前方後円墳のレビュー・感想・評価

ラストシーン(2001年製作の映画)
1.0
かつての映画撮影所に関わった内輪盛り上がりのようなノスタルジックな物語。DVDのパッケージに麻生久美子の顔が大きく出ているが、彼女は本作品の主役ではなく、主要な役割を果たしているものの、物語をひっぱっていく登場人物ではない。彼女の顔が出ていないとそのDVDを手にとってもらえない程度の作品であることを露呈しているように感じられてしまう。
で、実際、物語はどうかというと今ひとつつかみ所がなく、盛り上がりがないのである。突如姿を消した映画界のスター、三原健(西島秀俊、ジョニー吉長)が突然ふらふらと舞い戻り俳優として活動を再開するのだが、その存在に精彩は感じられない。ただ、その場所を噛み締めるような表情のまま、しばらくはだらだらとした撮影風景を見せられるだけだ。彼の意図が何かが判然としないまま、彼の過去がが回想シーンとして多くの時間を占めるようになるのだ。そこからはさらに何が伝えたいのかがわからなくなってくる。ただ単に、彼の黄金期と彼の妻、千鶴(若村麻由美)との恋物語を見せられているようになる。だが、ミオ(麻生久美子)が彼との交流の中で、彼女自身が映画の仕事を続けていくきっかけになることと、彼女を含めたスタッフ全員が三原を支えることで、映画の情熱を取り戻すことになることからクライマックスにつながり、三原の演技で一気に物語が熱くなる。
結局のところ、全体的に映画世界の風情のようなものを感じることができるが、人間ドラマとしての展開に物足らなさを感じてしまうのだ。