ドント

感染のドントのレビュー・感想・評価

感染(2004年製作の映画)
3.9
 2004年。ワーッ。人も怖いし怪異も怖い、全部が恐怖の限界病院ホラー。給与未払いに備品すら足りないという今日明日で破綻するレベルの病院、医師や看護師もギスギスしてるし困った患者さんも多いここで医療ミスが発生、隠蔽しかねぇ……と工作している最中、異常な病態を示す人間が緊急搬送されてきて……
『K2』という医療マンガがある。お医者さんも看護師も患者もみんな頑張って、難しい手術や困難な病を乗り越えていき黄金の意思を繋いでいくポジティブな光の医療マンガである。これを裏返してドブにつけて「呪い」と「発狂」を足すと本作になる。
 経営危機、備品不足、新人いじめ、コトが起こる前からおかしな人々、いやそれもお金と人手が足りないからなのだが、とどめとばかりに医療ミスを隠蔽しちゃう。カリカチュアされてはいるものの「瀬戸際にいる人間たち」が活写されていてこれが実によい。追い詰められ感が怖くてよい。病棟やライティングなども不安を煽る。何が起きてもおかしくない異様な雰囲気が満ちている。
 無茶苦茶な怪異、異常現象が起こる。全身溶解・体液緑色の患者が運ばれてきて医師のひとり(佐野史郎)が「珍しい症例だ。よし、様子を見つつ研究しよう」と言い出すのだから凄い。セッティングした瀬戸際&異様な雰囲気を越えている無茶苦茶度だけれど、ある意味こう、この状況をより巨大な異常が包み込むような感じになってきて、そんな馬鹿なと言う余裕すら失われる。迫力がある。
 どんどんお化け屋敷じみてくる病院で、看護師も医師もどんどんおかしくなっていく。おかしくなり方もタガが外れているのだけれど、雰囲気・空気が完全に仕上がっちゃっているのでこちらはギュンギュン巻き込まれるしかない。かど真木よう子が天井から逆さにぶら下がるのはちょっとやりすぎだと思う。
 最終的には超自然ではあるものの、少し収まりがよすぎるくらいの理屈がつけられて終わる。しかしこのイヤな嫌な厭ぁな気持ち、病院の閉塞感、人間のギスギスぶりは尾を引いて残る。怖い、というよりは不安で嫌なホラーで、私の好みにもピッタリくるのだった。
 デジタル撮影のようで色合いは見事ながら今観るといささか安っぽく見える。なので少し古い画質に加工などしたら倍くらい怖いのではないか。『予言』『ノロイ』と並べてどっかで特殊リマスターやってくれねぇかな。配信などされていないのがもったいない作だと思う。
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