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ジャージの二人のodyssのレビュー・感想・評価

ジャージの二人(2008年製作の映画)
3.0
【なんか、こー、点描画、かなー】

どうにもこうにも日本映画である。
つまり、説明を極度に省いてぽつりぽつりと石を置いていく囲碁みたいな作りなのだ。そういう意味では、是枝監督の『歩いても歩いても』なんかとは正反対。是枝監督はきっちり細部まで埋めていく。『ジャージの二人』は、そうじゃなく、点描画ふう。

可笑しいところが随所にあるけど、よく考えてみるとこの映画で描かれているのは家族の危機なのである。登場人物たちはみな危ういところに立っているのだ。途中で客として出てくるダンカンを含めて。そういう背後にある危うさは、避暑地で道に迷いそうになったり、イノシシに襲われるかも知れないという恐怖感とどこか通底している。笑えるようでいて危ういのである。

不○の妻が「子供作りたい」って、不○相手の前でならともかく、夫の前で言うの、あんなのアリですかね? 私だったら、ぶんなぐるけどなあ。しかし堺雅人はぶんなぐるでもなく、妻を別荘に連れてくる。優しいんだねえ。でも、散歩に出て相手が腕を組もうとすると拒絶する。優しいのか、残酷なのか。

大楠道代はなぜお父さんの職業についてあんなに詳しく知っているのか? そもそもどういう人なのか、謎である。点描画だから仕方ないかなー。

それでも、別荘を持っているんだから、まあ、昔風の言い方をすると、ブルジョワだよね。クルマも、VWゴルフとはいえ、外車だし。ブルジョワジーのひそかな楽しみ、ですよね。堺雅人は仕事辞めたのに食っていけてるようだし。お父さんもそんなにマメに仕事をしてるようでもないし。お父さんと堺雅人は22歳しか年が違わない。学生結婚だったのかな。それとも同棲・大学中退なんですかね。つまらないことのようだけど、説明のないそういう細部が気になってくる映画だった、良くも悪くも。
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