健一

砂の器の健一のレビュー・感想・評価

砂の器(1974年製作の映画)
4.0
『幸せ なんてものがこの世の中にあるのかい?
元々そんなものは無いのさ。
無いからみんなが そんな影みたいなものを追っているんでね。』

WOWOWで放送していたので録画して鑑賞。

お恥ずかしながら今回が初鑑賞。😅
何度もテレビドラマ化されてますが、そちらも一回も見たことがありません。😰
もちろん、原作も。🥵
ようやく見ることが出来ました。😂

ちなみに 私のこの一個前のレビュー「鬼畜」がロードショー公開された時、同時上映は本作の再上映だったようで、
「鬼畜」と「砂の器」の映画館での二本立て。
さすが、なんでもありの昭和!
観客の疲労度なんか何も考えていない。😅
この二本立てはツラすぎるよ!😮‍💨

国鉄蒲田操車場溝内で死体が発見される。
身元は分からず 捜査は難航。
事件を担当する二人の刑事は地道な聞き込みの末に 事件前夜、被害者と酒を飲んでいた若い男に行き当たる。
刑事は少ない手掛かりを得て男の行方を追う。
しかし、再び捜査は難航。
迷宮入りかと思われた時、小さな新聞記事がキッカケとなり捜査は急展開する・・・

見応えたっぷりの143分。
さすが世間から『名作』と呼ばれるだけのことはある。
日本映画史に刻まれるサスペンス映画の傑作と言っても過言ではないだろう。

前半。
ふたりの刑事が 汗だっくだく💦になって各地を聞き込みに周る。
観ているこちらも暑くなる。🥵
この辺は黒澤明監督作「野良犬」へのオマージュなのかな?
前半は見応えはあるのだが、イマイチ盛り上がってこない。
『小さな新聞記事』や『中央線の車内から撒く紙吹雪』などちょっと出来過ぎなエピソードに少し引いてしまう。
ただ 役者たちの飾らない演技は どなたも素晴らしい。
丹波哲郎と森田健作の『汗だく🥵刑事コンビ』も実直で親近感が湧く。
ダウンタウンの松っちゃんが子供の頃から大ファンだという 加藤剛 も物語のキーパーソンとしての存在感を大いに発揮していてこちらも素晴らしい。

後半。
一気に盛り上がってくる!
この切り返しの展開がホントに凄い!
丹波哲郎の曲がらない事件の説明。すべての線上が一気に繋がるこの気持ちいいほどの納得感。
貧しい 父と息子 の『絆を深める厳しい旅』。
セリフを一切排除し『画』だけで観客に訴えかけてくるこの演出。
この無音の親子愛に誰もが打ちのめされてしまうのではないだろうか。

そして迎えるラスト。
あの 悲しいピアノの旋律 は身体の全神経に冷たく突き刺さってくる。

『地位』と『名誉』のためなら、人は『過去』を抹消し『殺人』まで犯せるのか?

それとも。

それは父への変わらぬ『愛』なのか・・・

本当に『幸せ』なんてこの世の中には無いのでしょうか。

鑑賞後に改めて本作のジャケットを見ると
言葉にならない想いが込み上げてくる・・・
健一

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