秋日和

冷たい水の秋日和のレビュー・感想・評価

冷たい水(1994年製作の映画)
4.0
タイトルに反して印象に残っているのは、冷えきった彼らを過剰なまでに温める火。ダイナマイトの導線につけられた火は勿論のこと、パーティーの中で燃え上がる炎や、極寒の中でかじかむ手によってつけられた煙草の火も忘れがたい。熱は感じるけれど、温もりを一切感じさせない「火」の連鎖は、この映画の冷たさに大きく貢献していた気がする。それは丁度、新作『冬時間のパリ』で使われていた、ある種解放感を伴うような煙草の火とは全く違う。描かれている人物が16歳か、熟年夫婦かで、こうも違った温度を持っているのかと思う。16歳が吸って吐く煙草は、冷たい。

個人的な趣味で言うと、映画の途中で劇中人物の髪型が変わるのは、結構嬉しいポイント。そこに意味なんて見つける必要はないけれど、言葉にしようのない覚悟が見える気がする。ゴツゴツとした地面に落ちた自分の髪を、這いつくばいながら拾うヴィルジニー・ルドワイヤンは、この世の全てと決別する意思への迷いが仄かにあって、ああこの冷たさを纏ったヒロインもたった16歳なんだよなと思わずにはいられない。心の動きが見え隠れしたあのシーンは、この映画の中でひときわ温かな瞬間だった。

※追記※
心に葛藤を抱えた少年が電車に乗るときは、やっぱり進行方向と逆向きに座るよね!と一人納得。
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