“青年の成長物語”と言えるのだろうが、そんな適当なジャンル分けを嘲笑うようなハードな内容だった。無学で何の後ろ盾もない青年が、暴力の支配する過酷な世界で生き残っていく。
まず刑務所事情に驚く。どこの国かと思うくらい多様な人種が詰め込まれた刑務所。みんな私服。
「メシは?」「ダチと会うんで」「コーヒーぐらい飲んでけ」
これが刑務所の会話って。ただこの直後には、冷徹なセザールに目玉えぐられる勢いで脅されるんだが。セザール役のニエル・アレストリュプ。凄みのある存在感が別格。
出所の日、マリクは収監時に預けた私物を受け取る。スニーカーの底に小さく畳んで隠した50ユーロはあの日の全財産。6年の闘いを表すようで感慨深いシーンだった。