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アレクサンドル・ネフスキーのTSのレビュー・感想・評価

3.1
【中世ロシアの英雄】71点
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監督:セルゲイ・M・エイゼンシュテイン/ドミトリー・ワシーリエフ
製作国:ソ連
ジャンル:歴史
収録時間:108分
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3月いっぱいで大学の図書館に入れなくなるのでそれまでに図書館にあるエイゼンシュテインの作品は全て見ておきたいです。あと『イワン皇帝』と『十月』がありますが果たして間に合うか。。

今作はロシアの英雄とされるアレクサンドル・ネフスキーに焦点をあてた歴史映画です。しかし、製作が1938年ということで内容の真偽に関してはやや留意が必要です。何故なら、スターリンによる国策映画であるからです。国策映画となると平気で史実が曲げられるきらいがあるので、果たしてどこまでが史実通りなのか不鮮明なのです。実際1939年の独ソ不可侵条約に悪影響を与えるのを避けるために当初は小規模で公開されたようです。中身を見ると、アレクサンドル・ネフスキー率いる軍が1242年のチュド湖上の戦いにおいてドイツ騎士団を破るというものなので、ドイツからするとあまり良い気分にはならないでしょう。そういう政治事情の中製作された作品ということを頭に入れておかなければなりません。

ネフスキーとは「ネヴァ河畔の戦いに勝利した者」という意味らしく、後世においてそう呼ばれたようです。彼の戦功に関しては疑問視されている部分が多く、ロシア側には史料に出てきますが、ヨーロッパ側の史料にはほとんど出てこないそうです。史料は人間が書くということから、やはり普遍的な情報を絞り出すのは難しいという性質があります。自国の史料ならばもちろん絶賛する。しかし、他国の史料ならば、それが敵であれば酷評する。歴史家には、その両方の史料を読み解き、普遍的な価値を見出すという役目があります。余談ですが、僕も歴史家を目指した時期がありましたが、いかんせん様々な言語を駆使しなければならないため断念しました(笑)そんなに甘くはないということですね。。

話がずれましたが、中身は普通といったところ。13世紀の半ばということなので、ロシアという名の国ではなくノヴゴロド公国という国であります。世界史を学ばれた方からすると懐かしい響きかもしれませんね。西はドイツ騎士団、東はモンゴル帝国ということで敵勢力に挟まれている状態でした。そのあたりの歴史的事情は面白いです。
後半のチュド湖上の戦いはそれなりに見応えがありますが、その他のシーンに関してはあまり印象に残りません。アレクサンドル・ネフスキーには申し訳ないですが、本作にはどうしても、当時のソ連がエイゼンシュテインという天才監督を操り、国益にしようとした政治的事情が見え隠れしてしまいます。エイゼンシュテインは紛れもなく天才と思われますが生きた時代が中々過酷でありました。果たして彼自身が満足して製作した作品はいくつあるのでしょうか。
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