ハレルヤ

回路のハレルヤのレビュー・感想・評価

回路(2000年製作の映画)
3.7
大学生の川島亮介はある日インターネットを始めて不気味なサイトに繋がり、そこから周囲で奇妙な現象が起こり出す。その同時期にOLの工藤ミチも同僚が次々と自殺や失踪する事件が相次いでいた。この一連の出来事に翻弄される人々を描いたサスペンスホラー映画。

日本の映画で嫌な雰囲気のサスペンスを作らせたら天下一品の黒沢清監督作品。2000年の作品で当時はインターネットが一般的になりつつある時代。その数年前に「リング」が大ヒットし、ビデオ主体のホラーからインターネットへと媒体が変わった形。それが黒沢清の手にかかるとどういった仕上がりになるのか、気になっての鑑賞でした。

とにかく全編不気味で暗い雰囲気で押し切った作風。不協和音が随所で響き、化け物やクリーチャーに頼らず(幽霊はちょっと出てきますが)、気を抜くと闇に引きずり込まれそうな感じは監督らしさがありましたね。

何気ない日常から徐々に進行する恐怖。周囲の人が突然自殺したり、突然行方不明になる。その中盤までの描写は秀逸。ただ終盤ではその規模がデカくなりすぎて、ディストピア映画のようになってしまったのは、ちょっと話が飛躍しすぎたかなと。

あとインターネットも言うほど重要じゃなかった気もしましたね。「リング」はビデオやテレビが怖いと思えるほどのインパクトでしたが、本作ではそこまででもなく。

人間が抱える「死」への意識や「孤独」についてのテーマが盛り込まれていて、哲学的な要素も含んでいるのも本作の特徴。主人公たちの周囲だけでなく世界中の人々がいなくなっていく事で感じさせてくれます。

残念ながら今では実質俳優引退状態で、公開当時は人気だった主演の加藤晴彦や有坂来瞳の姿も貴重ですし、現在もバリバリ活躍中の小雪がだんだん狂気の世界に蝕まれていく演技も必見。終盤の廃工場での姿はゾクッとする怖さがありました。黒沢清監督と何度もタッグを組む役所広司もラストでちょこっと出演。

評価はあまり高くはありませんが、個人的には最後まで気が緩まなかったし、監督の味はたっぷり堪能出来たので良かったかなと思います。
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