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SOSタイタニック/忘れえぬ夜のatnのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

タイタニック映画は数あれど、これこそ至高と言える作品。後年、研究や緻密な調査の上で公開された97年「タイタニック」と違い、沈没時の船体動向に差異はあるものの、生存者による証言や当時の最新調査を丁寧に描いている。

97年「タイタニック」と同じ場面も少なくないが、本作は恋愛要素ではなく、人間性とその本質を通して描いているので、ドラマチックな面が削がれ、より一層生々しい。
最期は一等〜三等乗客、乗組員、派遣員の区分なく、全員が同じ顔で神に祈る。その中でたった一人、迷子になった幼子を寒さや恐怖から覆い隠すようにコートの中へ抱き抱える老紳士の姿は胸に詰まった。

個人的にデヴィッド・マッカラムのファンで、若かりし頃のハンサムな彼を崇めるだけで★100くらい付けてもいいが、そういった冗談は抜きにして、本当に素晴らしい映画である事は間違いない。
120分超でも淡々と進むのでそれほど長くは感じず、終幕もかなり淡白。主人公・ライトラー二等航海士がタイタニックへ乗船するために港へ向かう電車内で、たまたま同席した紳士が「人間が自然を服従させた証明だ」と息巻いて始まる本編は、救助に当たったカルパチア号船長の「人間にできる事はもうない」という台詞で終わる。シンプルに見えるが、発展した技術を過信する人間がそもそもの原因ではないのか?という含みを感じられるのがイギリスらしい。

(以下ちょっと違う話し)
タイタニック号を描いた作品、タイタニック号がオマージュされた作品が好きな方は、一度は必ず観るべき。
音楽隊が最期に奏でた賛美歌は、タイタニックのオマージュが一部描かれた85年アニメ映画版「銀河鉄道の夜」にも登場する。(日本語訳で曲調も変わっているが、同じプロテスタントの賛美歌。)この「銀河鉄道の夜」の音楽を担当している細野晴臣氏のお祖父様がタイタニック号の生存者というのを考えると、いざ死を迎え入れ主の御許に近づかんとせめてもの救いを求めた人々の心が、別の形で聴こえてくるのではないだろうか。
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