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SOSタイタニック/忘れえぬ夜のTSのレビュー・感想・評価

4.3
【万遍なく悲劇を描くタイタニック】91点
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監督:ロイ・ウォード・ベイカー
製作国:イギリス
ジャンル:ドラマ
収録時間:124分
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今更ながら気付いてしまいました。なんと、YouTubeには自動字幕翻訳機能があるのです。今作は英語で字幕なしの状態しかなかったので日本語字幕に自動翻訳してもらい鑑賞しました。ヘンテコな日本語であるものの、大意はわかるので最後までそれほど違和感なく楽しめました。ああ、字幕なしで英語聴き取れるくらいになりたいですね。。

さて、今作はタイタニックファンであれば見ておきたい中々の傑作と思われました。最も有名な1997年版の『タイタニック』以外にもタイタニック号に纏わる作品は数本存在します。その内の一つ、『タイタニックの最期』はアカデミー賞脚本賞を受賞していて、最後に「主よ、御許に近づかん」を歌いながらタイタニック号が沈没していくシーンが印象的でしたが、今作はそれをも上回る出来だったと感じました。タイタニック号を保有していたホワイトスターライン社があるイギリスが製作しているのですから説得力も相当なものです。

今作の良いところは、主人公が設定されていないところです。この事から、1997年版の『タイタニック』でありがちだった、「主人公だけの目線」を排除できています。タイタニック号沈没は20世紀最大の海難事故であり、1500人もの方が亡くなりました。奇しくも残された1500人のドラマがそれぞれあるわけでして、それを万遍なく撮影しようとしたところに今作の価値を見出せると思います。この一点だけに関していけば1997年版『タイタニック』をも凌駕します。

また、1997年版『タイタニック』は今作を多分に参考にしたと思われます。例えば、終盤ローズの横にいた「ブランデーを飲む髭男」のモデルのような男が登場したり、細かいですがイズメイ社長のボートに乗った後の苦しい表情とバックにタイタニックを映すシーン、またアンドリュースが時計を眺めるシーンなどがそうです。実際にタイタニック号に乗船していたストラウス夫人やベンジャミン・グッゲンハイムの描写もあり、例のハートリー率いる音楽団も演奏をしていたのでタイタニック好きにはたまらないかと思います。

またカルパチア号の描写が多いのも興味深く、まさに「タイタニック沈没事件」を俯瞰的に描こうとしているのがわかります。故に、タイタニックを何も知らない人からするとやや退屈になるかもしれません。これといって主人公もいないので焦点は定まらない。なので、1997年版『タイタニック』を見てから比較する形で見たら楽しめるかと思います。

終盤までBGMがほとんどないのも良い。1997年版の『タイタニック』は映像や物語は勿論、BGMも秀逸でした。なので、それはそれで評価に値するのですが、今作のように全くBGMがないのもリアリティがあり良いと感じました。あのタイタニック号は静かに大西洋のど真ん中に沈んでいったのですから、当時の静かな恐怖を再現出来ているかと思います。

面白いのが、タイタニック号が終盤真っ二つに割れないということ。これは、実は沈没したタイタニック号が発見されるまで論争になっていました。目撃者たちには、タイタニック号が真っ二つに割れたという人やそうでないという人がいて、これに関しては実物を探さないと判断のしようがなかったのです。しかし、その論争もタイタニック号が発見されることにより終わります。確かに割れていたのです。これが判明するのが1985年であるため、1958年に製作された今作は、こう描くしかなかったのです。
また、疑問に感じたのが、今作では「主よ、御許に近づかん」が流されなかったことです。これも目撃者によると、音楽団が最後に演奏した曲はこれだそうですが。。一体どうしてしまったのでしょう。

しまった。タイタニックとなると勝手に文章が長くなってしまいます。申し訳ありません。とにかく、今作は人々の悲劇を万遍なく描こうとしたところに価値があると思います。演出は大したことないだろうと思いきや、これも中々の出来栄えです。普通に見たらスコア3.0弱程度でしょうが、タイタニック補正が入るのでこのスコアです。現に、個人的にはかなり満足しました。

今作は長らく見たかったのですが、ほとんどレンタルしてなくて、意外にも翻訳機能というのがあるのを知って鑑賞出来ました。ちなみに、この翻訳機能のヘンテコな日本語がどれくらいかと言うと例えば
「子どもと女性を乗せて、そしてダウンロードしてください」や
「(男性に対して)わかりました、花嫁」
とかです。なので、大意はわかったので良いですがしっかりとした日本語字幕版が出たらまた鑑賞してみたいですね(笑)
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